胃潰瘍は、胃の粘膜が深く傷つくことで起こる病気で、みぞおちの痛みや胃もたれ、吐き気などの症状がみられます。薬で症状が落ち着くと治ったと感じる方もいますが、治療の進め方によっては再発を繰り返すことがある点が特徴です。治療の基本は胃酸を抑える薬を用いる方法ですが、再発を防ぐためには、ピロリ菌の有無や痛み止めなどの薬の使用状況、出血や合併症の有無といった背景を踏まえた対応が欠かせません。
この記事では、胃潰瘍の主な治療法とその効果、治療ごとの再発リスクの考え方、さらに治療中で気を付けたい生活面のポイントを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
胃潰瘍の治療法

胃潰瘍の主な治療法を教えてください
胃潰瘍の治療は、薬による治療を基本として進めます。多くの場合、胃酸の分泌を抑える薬を使い、胃の粘膜が回復しやすい状態を整えます。これにより、みぞおちの痛みや胃の不快感が軽くなり、潰瘍の治癒が進みます。加えて、検査でピロリ菌が確認された場合には、ピロリ菌を除菌する治療が行われます。これは胃潰瘍の原因に直接対応する治療で、再発を抑えるうえで重要な役割を果たします。出血を伴う胃潰瘍は、内視鏡を用いて出血部位を止める治療が選択されることもあります。
胃潰瘍の治療はステージによって異なりますか?
胃潰瘍は、内視鏡検査でみた潰瘍の状態により、活動期・治癒過程期・瘢痕期に分けられます。活動期は、胃粘膜の傷が深く、痛みや出血を伴うことがあるため、胃酸を抑える治療が行われます。治癒過程期は、潰瘍が縮小し、症状も落ち着いてきますが、潰瘍が治癒へ向かう途中の段階であるため、胃酸を抑える薬の継続が必要です。瘢痕期は、潰瘍自体は治った状態であり、この時期は新たな潰瘍を防ぐために、原因への対応や再発予防を中心に考えていきます。
胃潰瘍の治療法はどのような基準で決まりますか?
治療法を決める際には、ピロリ菌の有無や薬の使用状況、潰瘍の大きさや深さ、出血の有無などが総合的に考慮されます。ピロリ菌が関与している場合には除去治療が優先され、薬が原因と考えられる場合には、薬の中止や変更を考慮します。また、潰瘍が深い場合や出血を伴っている場合、穿孔などの合併症がみられる場合には、内視鏡治療や入院による管理が必要になることもあります。このように、胃潰瘍の治療法は、潰瘍の状態や背景を踏まえて決められます。
胃潰瘍|治療法別の効果

胃潰瘍の薬物療法はどの程度の効果が期待できますか?
胃潰瘍の薬物療法による効果は、原因によって治癒率に幅があることがわかっています。報告では、ピロリ菌が関与している胃潰瘍は治癒率は約95%と高い一方で、痛み止めなどの薬(NSAIDs)が原因となっている胃潰瘍は治癒率は約73%と低くなります。このように、同じ薬物療法を行っても、潰瘍ができた背景によって治りやすさが異なります。
参照:『胃・十二指腸潰瘍成因を考慮した酸分泌抑制剤の使い方』(日本消化器病学会雑誌)
胃潰瘍は手術で完治しますか?
過去には、幽門側胃切除などの外科的治療が選択されることもあり、潰瘍そのものを切除することで治癒が得られる治療法と考えられていました。一方で、手術は身体への負担が大きく、術後の食事や生活に影響が及ぶことがあります。そのため現在は、出血や穿孔などの重い合併症がある場合や、薬物療法や内視鏡治療で対応できない場合に限って行われる治療と位置づけられています。
胃潰瘍は治療をすれば再発しませんか?
胃潰瘍は、治療によって潰瘍そのものは治癒しますが、治癒後に再発するかどうかは、原因への対応が行われているかどうかによって変わります。胃酸を抑える治療で一度は治っても、潰瘍の原因が残ったままの場合には、時間をおいて再び潰瘍が生じることがあります。特に、ピロリ菌感染がある場合や、痛み止めなどの薬(NSAIDs)の使用が続いている場合には、治癒後も胃に負担がかかり続け、再発につながることがあります。そのため、胃潰瘍の治療は、潰瘍を治すことに加えて、ピロリ菌の除去や薬の見直しなど、再発を防ぐための対応まで含めて進めることが重要です。
胃潰瘍の治療法別の再発率を教えてください
胃潰瘍の再発率は、選択された治療内容によって異なります。ピロリ菌を除去せずに、胃酸を抑える薬のみで治療した場合、長期的にみると再発を繰り返しやすく、累積再発率は約65%と報告されています。一方で、ピロリ菌の除去に成功した場合には再発は減少し、累積再発率は約11%まで低下し、年単位でみた再発率は、年率で約1〜2%程度とされます。
また、NSAIDsが原因となっている胃潰瘍は、原因となる薬の中止や変更を行うことで、年率の再発率は約2%と低く抑えられます。さらに、過去に行われていた外科的治療は、幽門側胃切除などの手術後の再発率は約1〜4%と報告されています。
参照:
『消化性潰瘍診療ガイドライン 2020(改訂第3版)』(日本消化器病学会)
『胃・十二指腸潰瘍成因を考慮した酸分泌抑制剤の使い方』(日本消化器病学会雑誌)
『胃潰瘍の外科的治療』(胃と腸)

