若年性アルツハイマー型認知症の発症には、遺伝的な要因だけでなく生活習慣や既往歴もかかわっています。糖尿病や高血圧といった生活習慣病、頭部外傷の経験などが危険因子として報告されています。どのような要因が発症リスクを高めるのか、科学的な根拠とともに詳しく見ていきましょう。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
若年性アルツハイマー型認知症の発症に関わる危険因子
発症には、さまざまな危険因子が関与しています。遺伝的背景だけでなく、生活習慣や既往歴も重要な要素となります。
生活習慣病と認知機能への影響
糖尿病は若年性アルツハイマー型認知症の重要な危険因子です。高血糖状態が続くと、脳の血管がダメージを受け、神経細胞への栄養供給が低下します。また、インスリンの働きが低下すると、脳内でのアミロイドβの分解が妨げられることが研究で示されています。
高血圧も脳への悪影響を及ぼします。慢性的な高血圧は脳の小さな血管を傷つけ、微小な脳梗塞を引き起こすことがあります。これらの血管障害が積み重なると、認知機能の低下につながります。中年期の高血圧は、将来的な認知症リスクを約1.5倍から2倍程度高めるという報告もあります。
頭部外傷と認知機能への影響
頭部外傷の既往も若年性アルツハイマー型認知症の危険因子として報告されています。特に、意識を失うような重度の頭部外傷を経験した方では、発症リスクが高まることが示されています。頭部外傷は脳に直接的なダメージを与えるだけでなく、アミロイドβの蓄積を促進する可能性が指摘されています。
スポーツによる繰り返しの頭部への衝撃も問題となります。ボクシングやアメリカンフットボールなど、頭部への衝撃が多いスポーツに長期間従事した方では、慢性外傷性脳症(CTE)という状態が起こることがあり、これが認知機能低下につながることが知られています。
また、教育歴や知的活動の程度も関連性が指摘されています。教育や知的活動を通じて構築された脳の予備能力が、認知症の発症を遅らせる可能性があるとされています。ただし、これは絶対的な予防策ではなく、リスクの軽減に寄与するという位置づけです。
まとめ
若年性アルツハイマー型認知症は、65歳未満で発症する進行性の神経変性疾患です。初期症状には記憶障害、見当識障害、判断力の低下などがあり、日常生活や仕事に支障をきたします。原因は脳内でのアミロイドβとタウタンパク質の蓄積であり、遺伝的要因や生活習慣病が危険因子となります。
診断には認知機能検査と画像検査を組み合わせた総合的評価が必要で、治療は薬物療法と非薬物療法を併用します。薬物療法では、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬により症状の進行を遅らせることが期待されます。非薬物療法では、認知リハビリテーションや運動療法、環境調整などにより生活の質の維持を目指します。
早期発見と適切な治療、社会資源の活用により、本人と家族の生活の質を維持することが可能です。介護保険サービス、障害者手帳、障害年金などの制度を活用し、若年性認知症支援コーディネーターや地域包括支援センターなどの相談窓口を利用することで、必要な支援を受けられます。気になる症状がある場合は、早めに専門の医療機関を受診することが大切です。
参考文献
日本認知症学会「認知症診療の手引き」

