「価格は上がる、給付は変わらず」の板挟み。物価高騰が突きつける福祉用具業界の“限界ライン”

「価格は上がる、給付は変わらず」の板挟み。物価高騰が突きつける福祉用具業界の“限界ライン”

25年間「凍結」されたままの限度額

一方で、私たちがサービスを提供する土台となる「介護保険制度」の数字については、世間の物価上昇との大きな乖離があります。

例えば、「特定福祉用具販売(年間10万円)」と「住宅改修費(生涯20万円)」の上限額です。

これらの金額設定は、2000年の介護保険制度スタート時から、実に25年以上も変わっていません。
25年前と現在では、建築資材の価格も、ポータブルトイレの価格も全く異なります。

住宅改修で考えてみても、かつては20万円あれば手すりの取り付けと段差解消を行ってお釣りが来たかもしれません。

しかし現在、建設工事にかかる費用は上昇の一途をたどっており、同じ20万円でできる工事のボリュームは確実に減っています。

「本当はここまで直したいけれど、枠が足りないから手すり1本諦めましょう」という提案を泣く泣くせざるを得ない状況です。

特定福祉用具販売においても同様です。

シャワー機能・暖房脱臭機能などのついた高機能のポータブルトイレは10万円の枠を大きく超えることになり、「良いものはあるのに、制度の枠が邪魔をして不満足な商品を導入せざるを得ない」という状況になってしまいます。

▶︎ 福祉用具のレンタル販売選択制とは?多点杖を例に解説

事業所の「自助努力」はいつまで続くのか

ここで苦しい立場に立たされてしまうのが、私たち福祉用具貸与事業所です。

メーカーからの仕入れ値(購入価格)は確実に上がっています。

しかし、レンタル価格はどうか?というと・・・、介護保険のレンタル価格には「上限価格制」があり、全国平均貸与価格などに基づいて「これ以上のレンタル料金設定はダメ!」という上限が決まっています。

仕入れ値が上がったからといって、上がった分を簡単にレンタル価格に転嫁できる仕組みにはなっていません。
事実、2024年の報酬改定のデータを見ても、貸与価格の総額は微減傾向すら見られます。

つまり、「仕入れ値は上がるが、レンタル料は上げにくい」という状況下で、その差額=利益の減少分を、事業所が歯を食いしばって吸収しているのが現状なのです。

▶︎ [福祉用具制度と現場の25年を振り返る]

もちろん、介護保険財政が火の車であることは承知しています。
少子高齢化で支え手が減り、利用者が増える中で、「給付額を上げろ」と叫ぶのがどれほど難しいことかも理解しています。

しかし、このまま物価上昇と給付据え置きのギャップが広がり続ければ、体力の弱い事業所から淘汰され、結果としてそれぞれの地域の「福祉用具の安定供給」が損なわれる未来すら見えてきます・・・。

介護保険の財源の厳しさを理解しつつも、少なくとも「その時代の物価に合わせたレンタル料金設定」のような、経済実態に合わせた限度額の微調整を図っていく改善策があってもいいように思います(特に今後のインフレが続いていくであろう将来を考えるとなおさら!)。

「制度を守る」ことと、「事業者を守る」こと。

このバランスについて、しっかりコントロールされていく制度にしていかないと、なかなか危ない運営に繋がってしまうのでは、と不安を持ちながらの業務になってしまっている、そんな現在の状況です・・・。

というわけで、最後まで読んでいただきありがとうございました!

これからも、「介護の三ツ星コンシェルジュ」にて、福祉用具にまつわるコラムを定期的に投稿していきますので、どうぞよろしくお願い致します!!


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