中枢神経の一部が障害され、様々な症状を引き起こす「多発性硬化症」は難病にも指定されている病気です。
20代〜30代の若い年齢層で発症することが多く、症状が現れる「再発」と症状が治まる「寛解」をくり返すことが特徴です。
そして、その状態をくり返していくうちに徐々に身体機能の低下が現れはじめます。人によっては、初期段階から急激に身体機能が低下することもあります。
しかし、現在では治療方法の研究開発が進み、早期に治療を開始すれば病気の進行を抑えることが可能です。
今回は、日常生活の注意点・後遺症も解説していきます。是非参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『「多発性硬化症」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
多発性硬化症の注意点と後遺症

日常生活での注意点はありますか。
体温が高くなると、「ウートフ(Uhthoff)徴候」という多発性硬化症の特徴的な症状が現れることがあります。これは体温が高くなることにより、神経症状が一時的に悪化する現象です。体温が正常に戻ることで症状も治まりますが、運動や入浴の際などは気をつけましょう。また、過労やストレスが症状を悪化させる原因となります。しっかりと休息をとり、ストレスを溜め込まないように心がけてください。
さらに、感染症が多発性硬化症を悪化させることもあります。過度に心配しすぎる必要はありませんが、体調に変化があった時はかかりつけ医に相談することをおすすめします。
多発性硬化症に後遺症はありますか。
神経症状の進行度合いにより身体機能が低下し、歩行障害や排尿障害などが起きる可能性があります。そのため、リハビリテーションなどを行い、現状の身体機能をできるだけ維持できるようにしていくことが大切です。リハビリの効果はすぐに実感できるわけではありませんが、残った身体機能を最大限に活かすことができるように継続していきましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
多発性硬化症は難病にも指定されている進行性の病気です。しかし、現在では治療薬の開発が進み、病気の進行やつらい症状が抑えられるようになりました。しかし、治療の開始が遅れれば身体機能が低下し、日常生活に大きな支障が出てしまうこともあります。そのため、早期に治療を開始することが望ましいでしょう。
編集部まとめ

今回は中枢神経に硬い病巣が多数発生する「多発性硬化症」についてお話しました。
多発性硬化症は、症状がおきる「再発」と症状が治まる「寛解」をくり返し、徐々に身体機能が低下していく病気です。
感覚障害・歩行障害・排尿障害などの症状が現れ、日常生活に影響を及ぼすこともあります。
しかし、早期に治療を開始することで基本的には症状の進行を抑えることが可能です。身体の異変に気が付いた場合、できるだけ早めに検査を受けることがおすすめです。
また多発性硬化症を発症した場合には、薬による治療と並行してリハビリテーションを行うことも身体機能低下の予防につながります。
気になることがあれば一人で悩まず、医療機関へ相談するようにしてください。
参考文献
多発性硬化症/視神経脊髄炎(難病情報センター)

