「さゆりちゃん、もうあんな男ダメ。離婚しよう」
静香さんは真っ直ぐに私の目を見て言いました。
「え…でも、子どもたちにとってはパパですし、経済的にも…」
私が弱々しく口にすると、静香さんはさらに強い口調になりました。
「さゆりちゃんはあんな男といてつらくないの?お金はあいつと女から取ればいいし、うちの実家も支援する。責任はしっかり取らせて離れた方が、きっとさゆりちゃんのためになるよ。あんな弟で、本当にごめんね…」
静香さんの言葉は、私の心の奥底に沈めていた黒い感情を揺さぶりました。さらに静香さんは続けます。
「縁を切るのはあいつだけ。離婚しても、私もうちの両親もさゆりちゃんの味方だよ。みちるちゃんとみゆちゃんも、一緒に育てていこう。あの男のことは切り捨てていいから」
静香さんの力強い言葉に、私の迷いは消えました。私はただ、自分の気持ちに蓋をしていただけだったのかもしれません。
「静香さん…ありがとうございます。本当は、別れたいって思ってます」
「ならさっそく準備して。温泉まで追いかけよう。いいアイデアがあるから」
なんと、静香さんは夫が今朝出かけたその温泉で、不倫劇の幕を下ろさせようというのです。あまりの行動力に私はびっくりしてしまいました。でも同時に、本当に心強く思ったのです。
義姉の力強い提案に、心は決まった
子どもたちのことや、経済的な面を考えると、離婚には踏み切れなかった さゆり。ですが、義姉・静香の力強い提案に心が揺れ、ついに本音が出ます。
その後、静香の機転で夫の宿泊先をあっさり特定することができました。以前、家族で旅行をしたとき、旅行サイトにログインした夫の履歴が残っていたのです。予約履歴を確認したところ、男1・女1で取っていることが発覚。これは、やはり完全に黒ですね。
娘たちを実家に預け、さゆりは義姉とふたりで温泉宿へと向かいます。
ついに不倫旅行の現場を突撃!
正勝たちがいる旅館に着いたのは、夕食が始まるころ。静香が旅館のロビーから正勝の部屋に連絡をします。
「正勝、私よ。静香。急だけど、大事な話があるの。ロビーまで降りてきて。あ、そこにいる女性もご一緒にね」
静香さんの声は静かでしたが、有無を言わせぬ迫力がありました。数分後、正勝は呆然とした顔で愛人と一緒にエレベーターから降りてきました。愛人は、若くて派手な服装の女性で、私の顔を見るなり、すぐに青ざめていました。
正勝は私が実家にいるはずだと思っていたのでしょう。
「な、なんだよ、2人ともどうして来たんだよ」
正勝は完全に混乱していました。私は一歩前に出ました。手に持っていたのは、静香がクリアファイルに入れてくれた離婚届と慰謝料請求書です。
「あなたとは離婚します。そして、あなたとそこにいる女性に慰謝料を請求します。金額はここにある通りです。すぐにサインしてね」
「宿帳を調べれば、愛人さんの情報も全部わかるんだからね?逃げられないよ」
私と静香は静かな声で、2人の逃げ道をふさいでいきます。
現場をおさえられた夫は、もう逃げられません。離婚届と慰謝料請求書を突きつけ、現実を認めさせます。

