健康診断で「便潜血陽性」と言われると、誰もが不安を感じるものです。一方で、「痔のせいだろうから大丈夫」と自己判断してしまう人も少なくありません。そこで、便潜血検査の正しい意味と、陽性となった際に大腸内視鏡検査を受けるべき理由について、医師の森田先生(辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科)に話を聞きました。
※2025年10月取材。
≫【1分動画でわかる】「便潜血陽性」を放置するリスクを解説
監修医師:
森田 洋平(辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科)
杏林大学卒業後、東京北社会保険病院(現・東京北医療センター)で初期臨床研修、筑波メディカルセンター病院で外科研修、埼玉医科大学国際医療センターで消化器外科フェロー。その後、消化器内視鏡、肛門外科を専門とし辻仲病院柏の葉などで経験を積み、辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科 院長に就任。勤務の傍ら、聖路加国際大学公衆衛生大学院で研究をおこないMaster of Public Health(MPH)を取得。日本消化器内視鏡学会専門医。
便潜血検査の基本を医師が解説!
編集部
便潜血検査とは、どのような検査なのでしょうか?
森田先生
便潜血検査は、便の中にごく微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。主に大腸がんやポリープなどからの出血を検知する目的でおこなわれ、健康診断でも広く用いられています。
編集部
どうして「ごく微量の血液」がわかるのですか?
森田先生
一般的に使われている免疫学的便潜血検査(FIT)は、人間の血液成分(ヘモグロビン)に反応する仕組みで、目視などで血液の有無を確認しているわけではないからです。食事の影響を受けずに、消化管からのごくわずかな出血を検出できます。
編集部
陽性と出たら「大腸がん」ということでしょうか?
森田先生
いいえ、陽性=がんではありません。痔や炎症などの良性疾患でも陽性になることがあります。ただし、「どうせ痔だろう」と放置するのは非常に危険です。実際、「痔がある」と思っている人と「痔がない」と思っている人で、大腸がんの発見率に差はなかったという報告もあります。
編集部
陰性だった場合は、安心してよいのでしょうか?
森田先生
陰性でも安心はできません。たとえば大腸の奥に病変があると、便が軟らかいため出血せず、便潜血検査が陰性のまま進行してしまうことがあります。検査の目的は出血そのものを探すことではなく、「がんのリスクが高い人を見つけること」にあります。陰性であってもがんのリスクがゼロということではないため、40歳を超えたら一度は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けておくとよいでしょう。
便潜血陽性後に大腸内視鏡検査が必要な理由
編集部
なぜ、陽性の場合に大腸内視鏡検査が必要なのですか?
森田先生
便潜血検査はあくまでスクリーニングだからです。どこで出血しているのか、痔なのかポリープなのか、それともがんなのかを正確に判断するには、大腸内視鏡で直接粘膜を観察する必要があります。実際に、「便潜血検査の後に内視鏡検査をすることで大腸がんの死亡率が減らせる」という研究結果も出ています。
編集部
大腸内視鏡検査について教えてください。
森田先生
肛門からスコープを挿入して大腸の粘膜を詳細に観察する検査です。早期がんやポリープを発見できるだけでなく、これらが見つかった場合は、その場で切除することも可能です。つまり、大腸がんの「早期発見」だけでなく「予防」までできる大変優れた検査といえます。
編集部
便潜血陽性を放置すると、どんなリスクがありますか?
森田先生
ポリープが切除できないまま大腸がんになってしまう危険性や、発見が遅れてがんが進行してしまうリスクがあります。実際に、便潜血陽性を放置した人が後に大腸がんと診断された場合、そうでない人に比べて死亡率が約4倍上がるというデータもあります。早い段階で内視鏡検査を受けることが、自分の命を守ることにつながるのです。
編集部
「痔だから陽性になるのは当たり前」という意見もよく聞きます。
森田先生
そのような理由で精密検査を先延ばしにしてしまう人も多くいます。しかし、痔がある人でも痔がない人と同じ割合で大腸がんが見つかっているため、安心はできません。肛門科と内視鏡科が併設されている施設を受診すれば、両方一度に相談できます。

