痛そう、つらそう… それでも検査を受けることの意義
編集部
実際に、便潜血陽性を放置してしまう人も多いようです。
森田先生
「陽性は痔のせいだろうから大丈夫」とか「ほかに症状がないから」と放置しておくのは非常に危険です。便潜血検査、大腸内視鏡検査の目的は「痔を見つけること」ではなく、「大腸がんがないと確認すること」です。精密検査を避けることは、命を縮める選択になりかねません。
編集部
検査自体が怖い、痛そうという声もあります。
森田先生
今の大腸内視鏡検査は、鎮静剤や鎮痛剤を併用し、眠ったまま苦痛なく受けられるケースがほとんどです。鎮静剤は保険で認められているから安心ですし、使用するスコープも細く改良されており、検査時間は短縮しています。不安な気持ちになるのもわかりますが、自分や家族のために、まずは一度受けてもらえたらと思います。
編集部
検査後に気をつけることはありますか?
森田先生
鎮静剤を使った場合、しばらくは安静にしてもらい、自動車や自転車の運転を避けてもらっています。鎮静剤を使っていないケースは特に制限はありません。ただし、ポリープ切除をおこなった際は、出血予防のために数日間は激しい運動や飲酒を控えるよう伝えています。検査後、一時的に腹部膨満感や軽い腹痛が発生することもありますが、多くの場合数時間で治まります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
森田先生
便潜血検査を含む大腸がん検診は、子宮頸(けい)がん検診と並び、国内外の公衆衛生ガイドラインにおいて「最も推奨度の高いがん検診(Grade A)」に位置づけられています。これは大腸がんによる死亡率を有意に減少させることを示す、大腸がん検診プログラムの科学的エビデンスが、多数報告されているためです。こうした「死亡率を下げることが科学的に示されている検診」は、医療の中でもごく限られた存在です。大腸がん検診は「便潜血検査を実施し、陽性の場合には必ず大腸内視鏡検査をおこなう」という二段階構造で設計されています。便潜血検査で陽性となったら放置せずに、必ず大腸内視鏡検査を受ける。これが世界的にも推奨されている「命を守る行動」です。
編集部まとめ
便潜血検査は「がんを診断する検査」ではなく、「がんの可能性がある人を見つけるための検査」です。陽性だからといってすぐにがんになるとは限りませんが、放置すればがんの重症化リスクが高まります。「痔の出血だと思う」「症状がないから大丈夫」と安心せずに、一度大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。

