浩太「すみません。待たせました」
綾里「あ~!全然っ!初めて誘ってくれて嬉しかったから、私が早く着いちゃっただけ」
その後「そういう関係の大人がしそうな会話」を繰り広げながら歩く2人。正直、気持ち悪いと思いました。綾里さんはつくづく、夫から自分に好意があると信じ切っていると思いました。実際、夫もノリノリだったんでしょうけど。
浩太は約束通りそういうホテルの前まで綾里さんを連れて来ました。綾里さんのまんざらでもなさそうな、明らかにトーンがアップした声音がいっそ笑えてしまうほどです。私が予約しておいた部屋に、二人で入っていきました。その二人のあとを、私もつけます。
部屋の扉の前で立ち止まり、携帯から聞こえる二人の会話を少し聞いてみることにしました。その気もなく萎えている浩太の言葉とは裏腹に、これからのことを期待し過ぎている綾里さんの声、これから私が現れることなど、思ってもいないでしょう。
私はインターフォンを押し、更に、ていねいに扉をノックしました。「はぁ~い」と出てきたのは綾里さん。顔には誰あんたとでも言わんばかりのことが書いてあるようでした。
英麻「どうも、浩太の妻の英麻です」
綾里「え…?」
綾里さんの顔が強張るのが分かりました。
まんまとワナにかかった不倫女
ホテルに突撃した英麻。大胆な作戦ですが、言い逃れできない状況を作ることができました。
さっそく、話し合いを始めた3人。英麻は、綾里にため込んでいた怒りをぶつけ、スッキリ。残るは、夫への制裁です。
不倫女の目の前で、夫を捨てた
英麻「自己愛も承認欲求もすごいですね。もう夫のことは好きにしてください」
浩太「英麻、俺は…」
綾里「いいじゃんこんな女捨てたら。想像より遥かにあくどいね」
本当に、どの口が言っているんでしょうか。まぁ、思っていたことを吐き出せてスッキリしたので、あとはこれで全てを終わらせるだけです。
英麻「浩太、離婚の話はこのあと進めましょう。この自己愛女と再婚するなり好きにしたら?」
既に私の名前が書かれた離婚届を目の前に差し出すと、浩太の手は震えていました。綾里さんは乗り気で、浩太に早く名前を書くように促します。それはそうです、これで浩太が自分のものになると思っているんでしょうから。
本当に、第一印象から最後の印象まで、最悪な人でした―――。
離婚を突きつけられ、おどおどするばかりの夫。今になって、自分のした過ちの大きさに気づいたようです。ですが、裏切られた英麻の傷は、それ以上です。

