「リュックに入れるのを見た」勘違いから虚偽通報、そして偽装工作へ…私服警備員に有罪判決

「リュックに入れるのを見た」勘違いから虚偽通報、そして偽装工作へ…私服警備員に有罪判決

商品をリュックに入れているのを見た──。商業施設で私服警備員として勤務していた男性が、一人の買い物客を「万引き犯だ」と虚偽の通報をした。

男性は虚偽告訴の罪に問われ、大阪地裁は2月3日、懲役1年6カ月(求刑:同じ)、執行猶予3年を言い渡した。

発端は警備中の勘違いだった。しかし、その後、誤りを認めるどころか警察に通報し、疑いを強めるための偽装工作までしていたという。

その手口は、発覚も時間の問題と思われるほど杜撰なものだったが、なぜ引き返せなかったのか。裁判の様子をレポートする。(裁判ライター・普通)

●「被害者が起訴されるかもと思ったが、構わないと思った」

被告人は30代の男性。ツーブロックに刈り上げた髪型や、引き締まった顔つきには若さが感じられる一方、公判では緊張した様子もうかがえた。

検察官の冒頭陳述などによると、被告人は勤務先の商業施設の店舗で、被害者が商品を手にしたり棚に戻したりする様子を不審に思い、声をかけて荷物を確認したが、隠されている商品は見つからなかった。

その後、被告人が未精算と疑った商品は店内で発見され、自身の誤りに気付いた。しかし、会社の信用を失いたくないとの思いから、「商品を盗んだ犯人がいる」と警察に通報。臨場した警察官に対し「(被害者が)リュックに入れているのを見た」と虚偽の申告をした。

さらに、万引きを疑った未精算の商品を自ら店外の床に落とし、「被害品を見つけた」と同僚に伝えるなどの行為にも及んだという。施設の防犯カメラには、被告人が商品を床に落とす様子が記録されていた。

取り調べに対しては「被害者が起訴されるかもと思ったが、構わないと思った」といった趣旨の供述をしている。

●万引きを疑われた被害者は旅行で来日していた外国人

弁護人からは、被害者に宛てた謝罪文、事件後に通院している心療内科の通院状況、家族が今後の生活を見守る旨を記した上申書などが証拠請求された。

続く弁護人の被告人質問では、警備の仕事を一人で任せられるようになった時期であり、信頼を失いたくなかった思いが先行したこと、防犯カメラの前での偽装工作も冷静さを欠いていたと述べた。

また、上司からの叱責や処分が頭に浮かんだとも述べたが、同じような誤認による処分事例は示されず、被告人が一人で思い込みを強めていった印象を抱かせた。

現在は心療内科に通い、自分のミスを隠さず話せるようメンタルのコントロールを学んでいるという。事件当時は単身生活だったが、現在は祖母と二人暮らしをしており、母親とも週に2、3回、近況を報告するなど、家族に見守られながら生活していることを明らかにした。

弁護人を通じて被害者への謝罪と弁償を申し出ているものの、実現には至っていない。被害者が旅行で来日していた外国人で、すでに帰国しているためだという。

被害者の心情は法廷で明らかにされなかったが、長時間拘束されていた事実が明らかになり、慣れない異国の地で大きな不安を抱いていたことだろう。

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