チェッカーズのレコードで体験した昭和の衝撃…ネオ昭和アーティスト・阪田マリンが次に来る昭和カルチャーを予想

チェッカーズのレコードで体験した昭和の衝撃…ネオ昭和アーティスト・阪田マリンが次に来る昭和カルチャーを予想

ネオ昭和アーティスト・阪田マリン
ネオ昭和アーティスト・阪田マリン / 撮影=宮川朋久

昭和が終わってから今年で36年。時代は平成から令和になり、アナログはデジタルに。さまざまなものが未来型に変わった世の中にあって、今「昭和」が10代、20代のZ世代から注目を集めている。その先頭にいるのが昭和発信で知られる “ネオ昭和アーティスト”の阪田マリンだ。純喫茶、レコード、フィルムカメラ…それら昭和レトロを「昭和ロマン」と呼ぶ彼女は昭和の何に魅力を感じるのか。Z世代が憧れる昭和カルチャー、次に来ると予想する昭和ものを聞いた。

■チェッカーズのレコード再生で体験した昭和の衝撃

――阪田さんは平成12年生まれの24歳。何がきっかけで昭和に目覚めたのですか?

きっかけは中学2年のときです。おばあちゃんちに遊びに行ったら断捨離をしていて、その中に見たことがない大きな機械があって、それがレコードプレイヤーでした。聞いたら「これは音楽を聴く機械や」って。「え~、これで?」って思いました。だって、音楽を聴くといったらCDじゃないですか。それかスマホ。針1本で音が流れるって、ウソだと思いました。

それで試しに父が持っていたチェッカーズの「Song for U.S.A.」のレコードをかけてみたら、針を落としたときにプチプチってして、本当に音楽が鳴りだして。鳥肌が立ちました。CDで聴くのと全然音が違う、むき出しの音源にゾクッとしましたね。すごい衝撃、感覚でした。

「昭和の音、昭和の歌。私、これすごく好き!」って、そこから昭和の色々なものを探して好きになっていきました。

■フィルムカメラは二度旅行が楽しめるのがいい
ネオ昭和アーティスト・阪田マリン
ネオ昭和アーティスト・阪田マリン / 撮影=宮川朋久


――アナログレコードもですが、フィルムカメラが流行ったり、メロンソーダが人気になったり、Z世代は昭和のどういうところにハマるのでしょうか?

「体験してないからこその新鮮さ」ですよね。私たちは昭和を全く知らないから全てが新しく感じます。針で聴く音楽プレイヤーなんて新しさしかないし、フィルムカメラはその場で写真を確認できないもどかしさが逆に嬉しい。だって、二度楽しめるんですよ。

例えば旅行に行って、フィルムカメラで写真を撮って、家に着いてから「何を写していたかな? どう撮れているかな?」って現像されるまで分からない。届いた写真を友達と一緒に見て、「フラッシュ焚き忘れや~」とか、「これいいじゃん!」とか、あとでまた思い出を振り返られるって、つまり旅行を二度楽しめるということなんですよ。スマホでパッと撮る“その場写真”とは楽しさが全然違います。

――二度楽しめるという感覚はいいですね。たしかに当時はあとで見る楽しみがありましたが、カメラ付きケータイが出てからは、「昔は不便だった」という考えに変わった気がします。

アナログって、そのもどかしさがいいのかなって思います。ないものねだりではあるんですけど、便利すぎる世の中にはない、不完全だからの楽しさ、美しさの魅力って絶対にあると思います。

■Z世代がハマる昭和ロマン「令和×昭和=ネオ昭和」
ネオ昭和アーティスト・阪田マリン
ネオ昭和アーティスト・阪田マリン / 撮影=宮川朋久


――阪田さんはただ昭和のことを振り返っているだけでなく、“ネオ昭和アーティスト”として発信しています。この「ネオ昭和」とはどういったジャンルなのですか?

SNSで昭和発信をはじめた最初の頃(2018年開始)は、昭和のパロディー、昭和のモノマネコスプレというものを発信していたんですよ。それは昭和世代の人たちからは「懐かしい」と評判がよかったんですけど、同世代の人たちにはさっぱり。昭和を生きたことがない人からしたら、「なにそれ?」って。分からないし、刺さらない。

それが悔しく悔しくて、何とか同世代に昭和の魅力を伝えたくて考えたのが「ネオ昭和」です。【令和の今に流行っているもの】と【昭和】を融合させれば馴染みやすくて新しい昭和が出来上がるんじゃないかって。

――若い世代からの反応は変わりましたか?

急激に変わりました。「ネオ昭和」を始めてからは、例えば服はバブルスーツだけど、メイクとバックと靴は今時のブランドを使うとかにして、一気にフォロワーさんが年下や高校生世代が増えました。「昭和ロマンだ」って。

――昭和世代がモダンな着物、街並みに憧れた「大正浪漫(ロマン)」に似ていますね。

もうそれですね。古すぎないで、ちょっと前に生まれていたら体験できた時代への憧れ。昭和は細胞レベルで感じるエモさだと思います。

■阪田マリンが注目、次来る昭和ものはジュークボックス
ネオ昭和アーティスト・阪田マリン
ネオ昭和アーティスト・阪田マリン / 撮影=宮川朋久


――阪田さんが次はこれが来ると注目している昭和ものを教えてください。

私は音楽からハマったというのもあって、シティポップは絶対に来ると思っていたんですが、案の定ブームが来ましたね。その音楽つながりで、今はジュークボックスに注目しています。中にたくさんのレコードが入っていて、それを100円入れて選曲できるっていうのが若い人にはオシャレで新しい。

レコードプレイヤーはもうだいぶ馴染んできたじゃないですか。最近はアイドルの方もLPを出してもいるし。でも、ジュークボックスはまだあまり平成生まれには知られていなくて、新しいレコードの聴き方として、例えば家に置ける小型のジュークボックスが出たら流行るんじゃないかと思います。

――昭和グルメだとどうですか、 メロンソーダの次に来そうなのは?

固いプリンに注目です。これはもうSNSでバズったので知っている人も多いかもしれませんが、虎ノ門のヘッケルンという喫茶店の固いプリンがTikTokで火が点いて、今行列の人気です。固いプリンを出すお店は増えてきていますけど、ヘッケルンは昭和から続いている老舗で、固いプリンなら一度はここのを食べてほしいです。

――大阪出身の阪田さんがお勧めする、大阪の昭和スポットも教えていただけますか。

新世界にある喫茶ドレミは有名ですね。お店の雰囲気もメニューも昭和空間。ドレミに入るとほっと落ち着くんですよ。もう1つは道頓堀の近くにある純喫茶アメリカン。天井はシャンデリアで、2階建てのお城みたいな雰囲気です。ドレミとは違う意味で昭和にタイムトリップできる場所ですね。どっちも大阪に来たらぜひ立ち寄ってほしいお店です。

■Z世代の昭和トップランナー、次の夢はLPでのリリース
船越英一郎さんとツーショット
船越英一郎さんとツーショット / 撮影=宮川朋久


――阪田さんは昭和好きということから「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」(BS12 トエルビ)で船越さんとMCをされています。ここでの「昭和再生」とはどのようなものですか?

昭和のモノ、昭和を体験できるスポット、昭和のスター。そうした色んなジャンルから昭和を再生するという番組で、それこそジュークボックスの再生もありましたし、西城秀樹さんの半生を再生したり。船越さんがとにかく物知りで、すごく勉強になります。船越さんは昭和のことならなんでも知っている“昭和の神様”です。

――番組の中で気になった昭和ものは何がありましたか?

最近放送された回だと、大阪の新世界国際劇場の映画看板の手描き絵師が刺さりました。私、あそこの看板が好きで、看板前で写真を撮るというのを中学のときからしていたんです。どんな人が描いているんだろうと気になっていて、それを番組で見られて、絵師さんのあの絵を生む技術、熱意に感動しました。

もう1つが和田アキ子さんの特集です。そもそもアッコさんが大好きなんです。中3のときにYouTubeで「あの鐘を鳴らすのはあなた」のレコード大賞最優秀歌唱賞の受賞映像を見たのがきっかけで好きになりました。そのアッコさんがVTRで「船越英一郎さん、阪田マリンちゃん、こんにちは」って、私の名前を呼んでくれて。もう、一生の思い出です。

――Z世代の昭和トップランナーとして、今後どんな昭和発信をしていきたいですか?

私は2年ちょっと前までは素人で、芸能活動なんて考えたことがありませんでした。それがいきなり「昭和再生ファクトリー」のMCで声をかけていただいて、好きなものを発信していると人生って変わるものだなと思いました。そのおかげで夢だった昭和体験ができて、今も色々なことが叶いつつあります。

次に叶えたいと思っているのがLPレコードでのリリース。今風かつ昭和を感じる歌謡曲“ネオ昭和歌謡”を歌うザ・ブラックキャンディーズというプロジェクトでデビューしていて、今アルバムを制作中です。できればこの作品をLPで出したいです。あとは昭和をモチーフにした映画やドラマに出たい。これはもうずっと言い続けていて、絶対叶えたい夢ですね。

◆取材・文=鈴木康道

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