アーサー・ラッカム『シンデレラ』(1919年), Public domain, via Wikimedia Commons.
黄金時代の挿絵本の魅力
19世紀のヨーロッパでは、書物・挿絵への関心が高まり、19世紀半ばになると、挿絵は童話の本に欠かせない存在となりました。
19世紀後半に活躍した挿絵画家ギュスターブ・ドレの『長靴をはいた猫』, Public domain, via Wikimedia Commons.
しかし、当時の挿絵本は、富裕層や中流階級のもので、高価な贅沢品でした。その後、多色刷りの新しい印刷技術(※1)が開発され、本が子どもたちにとっても身近な存在へと変わっていきます。
変化のきっかけとなったのは、彫版師・刷師のエドマンド・エヴァンズと挿絵画家のウォルター・クレインが出版した「トイブック」です。
「トイブック」は、8〜12ページほどの簡易なつくりの本で、全ページカラー刷りの安価な絵本です。
さらに、近代的なオフセット印刷(※2)の技術が向上すると、原画をカラー印刷で忠実に再現できるようになりました。
カイ・ニールセンによる大型の豪華本「The North Wind Went Over the Sea」(北風は海を越えて)、『East of the Sun and West of the Moon』より(1914年), Public domain, via Wikimedia Commons.
カラー印刷の挿絵と装飾が施された豪華な本は「ギフトブック」と呼ばれ、クリスマスなどの贈り物として、一大ブームを巻き起こしたのです。
(※1)彫版師・刷師のエドマンド・エヴァンズが開発した、多色刷り木口木版を指します。それまで、絵本のカラー印刷は表紙のみで、中面の挿絵は手で彩色していたため、本づくりにおいて画期的な出来事でした。
(※2)凸版のカラー写真製版法=原色版。水彩絵の具のぼかしやペンの細かい線まで、原画をそのまま再現することが可能になりました。
3人の挿絵画家が描いた『シンデレラ』
初期の挿絵は、ひとつの場面を説明的に描いたものがほとんどでしたが、しだいに画家の独自の解釈や表現が加えられていきました。
ここでは、ウォルター・クレインの「トイブック」と、アーサー・ラッカム、エドマンド・デュラックによるギフトブックの『シンデレラ』をご紹介します。
