エドマンド・デュラック—装飾性に富んだ煌びやかな世界
エドマンド・デュラックが手がけたギフトブック『シンデレラ』(1910年), Public domain, via Wikimedia Commons.
20世紀初頭に活躍したエドマンド・デュラック(Edmund Dulac, 1882〜1953)は、アーサー・ラッカムと並んで、黄金時代に脚光を浴びた画家のひとりです。「線のラッカム、色のデュラック」と評され、鮮やかな色彩と奥行きのある写実的な表現で、童話の世界を優美に描き出しました。
ヒロインの名付け親である仙女がまとう豪華な衣装に注目すると、アクセサリーや布のひだなど、細部まで丁寧に描写されていることが分かります。また、仙女と星空、窓から漏れる光の明るさが、みすぼらしい身なりのシンデレラや闇夜との対比を生み出しています。
デュラックの巧みな色使いが、オフセット印刷によって微細に再現されたことで、彼のギフトブックは高い人気を獲得しました。
このように、同じ童話でも、画家によってまったく異なる世界を楽しめるのが、挿絵本の魅力です。
挿絵に描かれた童話の時代背景
次に、クレイン、ラッカム、デュラックの3人が描いたストーリーに焦点を当ててみましょう。彼らが制作した挿絵本には、ウォルト・ディズニーの『シンデレラ』と同様に、ヒロインの名付け親である仙女(フェアリー・ゴッド・マザー)が登場します。
しかし、同じくシンデレラの物語を収録したグリム童話では、仙女ではなく、ハシバミの木と小鳥がヒロインを救います。
なぜこのような違いがあるのかというと、童話はもともと民衆の娯楽で、口頭で語られていたことが理由のひとつです。人々のあいだに伝わる童話を蒐集し、書物として出版したのが、フランスの詩人・ペローや、ドイツの言語学者・文学者のグリム兄弟でした。
そのため、調査した地域や編集の方法によって、ストーリーに違いが生まれたのです。
ここでは、2つのバージョンの特徴を紹介し、物語の裏側にある時代背景を探ります。
