学校が動いてから、健也君は母親と手をつないで歩く姿や、両親そろって外出する姿が見られるようになりました。そしてある日、健也君の決定的な変化を見かけ、春香は安心感に包まれます。
その後の変化に驚く
健也君が通う小学校から、健也君親子と面談をすると連絡を受けてしばらくすると、健也君が外で1人でいる姿を見かけなくなりました。いつもの定位置だった道路の角にも、彼の姿はありません。もしかして、学校からの面談がきっかけで変化があったのだろうかと感じました。
「良い方向に行けたならいいけれど…」
健也君の姿を確認していないだけに、期待半分・不安半分の気持ちでした。
ある日の夕方、私が陽太と家の前で遊んでいると、遠くからこちらに向かってくる親子の姿が見えました。よく見ると、健也君がお母さんと手をつないで、話しながら歩いてくるではありませんか。手には、買い物袋が提げられています。
放置子の笑顔
「こんにちは」
声をかけてみると、健也君のお母さんは、少し笑顔を浮かべて会釈してくれました。そして、控えめな声でこう言ってくれました。
「すみません、うちの子がいろいろとご迷惑をおかけしていたようで…」
健也君のお母さんは、健也君から1人で過ごしていた時のことを聞き、私たちの家に勝手に来たことなどを耳にして謝罪しなければと思っていたといいます。お母さんは下の子の妊娠中から精神的に不安定になっていたそうです。しかもその時期にお父さんが長期出張になってワンオペが長く続き、ふさぎ込んでしまっていたそう。出産後は定期的に行政のサポートを受けていて、少しずつ回復して外に出られているといいます。
学校側が区の相談員やカウンセラーにつないでくれたそうで、今は健也君の話もよく聞けるようになり、一緒の時間をゆっくり楽しめるようになってきたと、静かに話してくれました。横にいる健也君の表情を見れば、今は安定していることがよくわかりました。
健也君の場合、放置されていたのは一時的な状況だったようで安心しました。
「お母さんと、仲良しなんだね」
私が声をかけると、彼は照れたように笑って、お母さんの後ろに隠れてしまいました。そのかわいらしい姿に、私は思わず笑ってしまいました。
そしてまた別の日。家族で車に乗って出かけようとすると、ちょうど健也君も家族で出かけるところでした。彼の家の駐車場に、お父さんもお母さんもそろって立っています。
健也君は、私たちが車に乗り込もうとしているのに気づくと、一目散に陽太に向かって駆け寄ってきました。

