●類似訴訟への波及は避けられない
──自主避難者に対する追い出し訴訟は35件、このうち国家公務員宿舎関連が28件あるとされています。今回の判断は、類似訴訟にも影響しそうです。
「国際人権規約に基づく居住権などを否定した原審は正当だ」と評価した今回の最高裁判決は、現在東京地裁で争っている「原発事故避難者住まいの権利裁判」における私たちの主張とは正面から対立します。
日本の法律には明文の「居住権」がありません。災害救助法に基づく応急仮設住宅の供与の仕組みは、短期の避難しか想定しておらず、避難が長期に及ぶ原発事故避難者に対する救助の仕組みとしてはまったく不十分です。そのため、私たちは、国際人権規約や国内避難民に関する指導原則などから、「住まいの権利」を導き出す主張をしています。原発事故被災者を包括的に救済する立法がない以上、国際法や憲法から権利を引き出す必要があるという立場です。
●反対意見は「大きな手がかり」
── 一方で三浦裁判長の「反対意見」は、避難者側の主張に沿う内容が多く含まれます。
今後、下級審の裁判官が無難に、「最高裁の多数意見に従っておこう」と考えるのか、それとも「反対意見を手がかりに判例変更を迫っていくべきだ」と考えるのかで、流れは大きく変わるでしょう。
私は、本来下級審の裁判官には、必要であれば最高裁に判例変更を迫るだけの気概があって当然だと思っています。ただ、2022年のいわゆる「6.17最高裁判決」(国の賠償責任を否定)以降の下級審を見ると、「右へならえ」で、気概など見えてきません。今後も下級審の裁判官が同じ姿勢なら、非常に厳しくなります。
それでも反対意見の内容は、今後の裁判で重要な手がかりになります。国際人権規約を踏まえる必要性を正面から受け止めた点や、避難指示を受けた被災者と受けなかった被災者を区別せず、避難を続ける合理性を評価した点は大きいと思います。

