進行速度は個人差が大きいものの、一般的にアルツハイマー型認知症よりも速いといわれています。発症から日常生活に重大な支障をきたすまでの期間は、平均して6〜8年程度とされています。病型や蓄積するタンパク質の種類、遺伝的要因などによって進行のスピードがどのように異なるのか詳しく解説します。

監修医師:
鮫島 哲朗(医師)
東京逓信病院脳神経外科部長
脳腫瘍頭蓋底外科センター長
【経歴】
平成2年3月宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業
平成2年6月宮崎医科大学(現宮崎大学)脳神経外科入局
平成3年4月九州大学救急部研修(厚生省研修プログラム)
平成14年4月Duke University Medical Center, USA
University of Torino , Italy
平成22年2月NTT東日本関東病院脳神経外科主任医長
平成25年4月浜松医科大学脳神経外科准教授
令和6年10月東京逓信病院脳神経外科部長脳腫瘍頭蓋底外科センター長
【専門・資格】
脳腫瘍頭蓋底腫瘍困難な脳外科手術等
医学博士
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医
前頭側頭型認知症の進行速度の特徴
進行速度は個人差が大きいものの、一般的にアルツハイマー型認知症よりも速いといわれています。発症から日常生活に重大な支障をきたすまでの期間は、平均して6〜8年程度とされていますが、病型や蓄積するタンパク質の種類、遺伝的要因などによって進行のスピードは異なります。
進行の段階と期間
前頭側頭型認知症の進行は、大きく初期、中期、後期の3段階に分けられます。初期では性格や行動の変化が中心で、日常生活は概ね自立しています。この期間は2〜3年程度続くことが多いとされています。中期になると、症状が明確になり、社会的な活動が困難になります。仕事を続けることが難しくなり、家事などの複雑な作業も支援が必要となります。中期の期間は3〜5年程度と考えられています。
後期では、全般的な認知機能が低下し、記憶障害も顕著になります。言語機能が著しく障害され、コミュニケーションが困難になることもあります。運動機能も低下し、歩行が不安定になったり、嚥下障害が現れたりします。最終的には寝たきりの状態となり、全面的な介護が必要となります。後期の期間は個人差が大きく、数年に及ぶこともあります。発症からの平均的な生存期間は8〜10年程度とされていますが、これは症例によって大きく異なります。特に、運動神経疾患(筋力低下など)を合併する場合は、進行がより速くなる傾向があります。
進行速度に影響する要因
進行速度に影響を与える要因としては、発症年齢が挙げられます。若年で発症した場合、進行が速い傾向があるとの報告があります。また、遺伝的要因を持つケースも、進行が比較的速いことが知られています。蓄積するタンパク質の種類によっても違いがあり、TDP-43が蓄積するタイプは進行が速いことが示唆されています。
運動神経疾患を合併している場合、筋力低下や嚥下障害などの身体症状が加わるため、全体的な状態の悪化が速まることがあります。一方で、適切な医療的ケアや介護サポートを受けることで、生活の質を維持し、合併症を予防することができます。規則正しい生活習慣、栄養管理、適度な運動、社会的な関わりの維持などが、進行の緩和に役立つ可能性があります。定期的な医療機関の受診により、状態の変化を把握し、適切な対応を行うことが重要です。
まとめ
前頭側頭型認知症は、行動や人格の変化を主症状とする認知症であり、比較的若い年代から発症することが特徴です。前頭葉と側頭葉の萎縮により、社会性の喪失、感情のコントロール障害、言語機能の低下などが生じます。初期段階では記憶は比較的保たれるため、認知症と気づかれにくいこともあります。
原因としては、タウタンパク質やTDP-43の異常蓄積、遺伝的要因が関与しています。進行速度は個人差があるものの、一般的にアルツハイマー型認知症より速く、発症から平均6〜8年で日常生活に重大な支障をきたします。人格変化は前頭葉の機能障害によるものであり、本人の意思とは無関係に生じます。
早期に症状に気づき、専門の医師を受診することで、適切な診断と対応が可能となります。家族や周囲の方は、症状が病気によるものであることを理解し、適切なサポート体制を整えることが重要です。気になる症状がある場合は、神経内科や精神科、物忘れ外来などを受診し、専門の医師の診察を受けることをおすすめします。
参考文献
厚生労働省 – 認知症施策の総合的な推進について
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター – 前頭側頭型認知症
日本神経学会 – 認知症疾患診療ガイドライン
公益社団法人日本認知症学会

