現代の白内障手術は超音波乳化吸引術を中心とした低侵襲な手技が標準となり、技術の進歩により安全性と効果が大幅に向上しています。手術の具体的な手技や使用される眼内レンズの種類について理解することで、治療に対する不安を軽減し、適切な選択ができます。

監修医師:
花房 彩(医師)
2013年埼玉医科大学卒業。卒後、埼玉医科大学病院にて初期研修を行い、同院眼科に入局。
2019年より行定病院、2022年より小江戸眼科内科、2025年よりくらかず眼科に就職。
【資格】
日本眼科学会 眼科専門医
白内障手術の詳細な手技と進歩
現代の白内障手術は、超音波乳化吸引術を中心とした低侵襲な手技が標準となっています。手術技術の進歩により、より良好で確実な治療が可能になっています。
超音波乳化吸引術の手技と特徴
超音波乳化吸引術は、現在の白内障手術の標準的な方法です。この手術では、角膜に2~3mm程度の小さな切開を加え、超音波を使用して濁った水晶体を細かく砕いて除去します。
手術は局所麻酔下で行われ、通常30分程度で完了します。まず、角膜周辺部に小切開を加え、前嚢と呼ばれる水晶体を包む膜に円形の切開を行います。次に、超音波プローブを挿入し、濁った水晶体核を超音波により乳化し、同時に吸引除去します。
水晶体皮質の除去後、後嚢を残した状態で人工水晶体(眼内レンズ)を挿入します。眼内レンズは折りたたむことができるソフトレンズが一般的で、小さな切開創から挿入後、眼内で展開します。通常は縫合の必要がありません。
この手技の利点は、切開創が小さいため術後の乱視が少なく、感染のリスクも低いことです。また、日帰り手術が可能で、患者さんの負担も軽減されています。
眼内レンズの種類と選択基準
眼内レンズには、さまざまな種類があり、患者さんのライフスタイルや希望に応じて選択されます。基本的な単焦点レンズから、近年開発された多機能レンズまで、幅広い選択肢があります。
単焦点レンズは、遠方または近方のいずれか一点にピントを合わせるレンズです。遠方にピントを合わせた場合、運転や景色を見る際には眼鏡なしで良好な視力が得られますが、読書などの近方作業には眼鏡が必要となります。逆に、近方にピントを合わせた場合は、手元の作業は眼鏡なしで行えますが、遠方には眼鏡が必要です。
多焦点レンズは、遠方と近方の両方にピントを合わせることができるレンズです。眼鏡への依存度を減らすことができる利点がありますが、夜間のハロー現象やコントラスト感度の低下などの副作用が生じる可能性があります。また、保険適用外となるため、費用負担が大きくなります。
乱視矯正レンズ(トーリックレンズ)は、白内障と同時に乱視の矯正も可能なレンズです。術前に強い乱視がある患者さんに適用され、術後の視力改善効果が高いとされています。
まとめ
超音波乳化吸引術は小切開で行われ、通常30分程度で完了する安全な手術です。眼内レンズは単焦点レンズから多機能レンズまで幅広い選択肢があり、患者さんのライフスタイルに応じて選択されます。日帰り手術が可能で患者さんの負担も軽減されており、現代医療の進歩により良好な治療成績が期待できます。
参考文献
白内障手術におけるDPCによる包括支払制度の評価
多施設での白内障手術の諸問題に関する資料「白内障手術の今を考える」
多焦点眼内レンズとの付き合い方

