日常生活の中で温度差を小さくする工夫や、身体への負担を軽減する習慣を取り入れることが、ヒートショック予防の基本となります。室温管理の方法や入浴時の適切な温度設定、安全な入浴手順など、すぐに実践できる具体的な対策について理解を深めましょう。

監修医師:
滝村 英幸(医師)
2006年4月聖マリアンナ医科大学病院初期臨床研修医
2008年4月 済生会横浜市東部病院循環器内科
2016年12月 総合東京病院(東京都中野区)循環器内科
2017年総合東京病院(東京都中野区)心臓血管センター
2022年4月総合東京病院(東京都中野区)心臓血管センター循環器内科心臓血管インターベンション科科長
【専門・資格・所属】
内科・循環器内科一般
冠動脈カテーテルインターベンション治療
末梢血管カテーテル治療
フットケア
心血管超音波検査
日本内科学会認定内科医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定心血管カテーテル治療専門医
日本心エコー図学会SHD心エコー図認定医
ヒートショックを予防する基本的な生活習慣
ヒートショックを防ぐためには、日常生活の中で温度変化を緩やかにする工夫や、身体への負担を減らす生活習慣を取り入れることが効果的です。誰でも実践できる基本的な予防策を知っておくことが重要です。
室温管理と温度差の縮小
ヒートショック予防の第一歩は、家の中の温度差をできるだけ小さくすることです。脱衣所や浴室には小型の暖房器具を設置し、入浴前に十分に暖めておくことが推奨されます。脱衣所用のヒーターやセラミックファンヒーターなどを使用して、室温を20度前後に保つことが理想的です。また、浴室暖房機能が付いている場合は、入浴の10〜15分前から作動させておくとよいでしょう。
トイレも冬場は冷え込みやすい場所です。小型の暖房器具を設置するか、便座に暖房機能がある場合は活用しましょう。廊下についても、可能であれば暖房を入れる、扉を開けて暖かい空気を循環させるなどの工夫が有効です。
居室内でも、急激な温度変化を避けるために、起床時や就寝時の室温管理に注意が必要です。起床時に寒い部屋で急に動き出すと、血圧が急上昇する可能性があります。タイマー機能を使って起床前に暖房を作動させる、厚手のパジャマやガウンを着用するなどの対策が考えられます。
入浴時の温度調節と入浴方法
入浴はヒートショックが起こりやすい場面の一つです。適切な入浴方法を実践することで、リスクを大きく減らすことができます。
まず、浴室と脱衣所を事前に暖めておくことが基本です。そのうえで、湯船の温度は41度以下、できれば38〜40度程度に設定しましょう。熱すぎる湯は血圧を急激に変動させる原因になります。
入浴時は、いきなり湯船に入るのではなく、かけ湯をして身体を慣らすことが重要です。足先や手先など、心臓から遠い部分から順にお湯をかけ、徐々に身体全体を温めていきます。これによって、血圧の急激な変動を防ぐことができます。
湯船に入る際は、半身浴から始めるとより安全です。いきなり肩まで浸かると、水圧によって心臓への負担が大きくなります。まずはみぞおちあたりまでの高さで数分間浸かり、身体が慣れてから肩まで浸かるようにしましょう。
入浴時間は10〜15分程度を目安にします。長時間の入浴は身体を温めすぎて、湯船から出たときの血圧低下を招きやすくなります。また、湯船から立ち上がるときはゆっくりと動き、急な動作を避けることが大切です。
入浴後は、脱衣所で身体を十分に拭き、すぐに衣服を着て体温の低下を防ぎます。水分補給も忘れずに行いましょう。入浴によって汗をかくため、脱水状態になると血液の粘度が上がり、血栓ができやすくなります。
まとめ
ヒートショックは、正しい知識と日常的な対策によって予防できる健康リスクです。めまいや立ちくらみ、動悸などの初期症状を見逃さず、急激な温度変化による血圧変動の仕組みを理解することが重要となります。特に高齢者や基礎疾患のある方はリスクが高いため、室温管理や入浴方法の工夫、トイレや廊下、早朝・夜間など注意が必要な場面を把握しておくことが欠かせません。あわせて、家族による見守りや緊急時の対応を共有しておくことで、万が一の事態にも備えやすくなります。
住環境の改善や生活習慣の見直しを含め、できる対策から無理なく実践していきましょう。少しでも不安や症状がある場合は、早めに医療機関へ相談することが、冬を安全に過ごすための大切な一歩となります。
参考文献
政府広報オンライン「交通事故死の約3倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」
厚生労働省「入浴関連事故の実態把握及び防策に関する研究について」
消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」

