■子どもにゲームをさせてランニングに行った夫はそれを「効率的でしょ?」と言うけれど?




ほんの数時間「子どもの面倒をみて」とお願いして出かけたのに、帰るとパパがいない。聞けばランニングに行ったという。子どもは1人ゲームをして待っていた。「ゲームはランニングしてる間だけだよ。効率的でしょ?」とパパは言うが、4歳児を1人にして外出することは普通なのだろうか?考え方や価値観をいくら言葉にしても、夫には届かない。「今回は、隣にいるパートナー(おもに妻)側が抱えている困りごと、“パートナーに理解してもらえないしんどさ”や“ずっと自分だけが頑張らなくてはいけない疲労感” などを可視化した漫画です。見どころは、夫婦それぞれが感じる“苦しさの正体”をお互いが理解できるように描いた点だと思っています」と、はなゆいさんは見どころを話す。








妻は夫の行動がおかしいと思いつつ「この人には言っても伝わらない」と、あきらめている。そして、我慢や尻拭いをするのは妻ばかり。我慢の限界を迎えたとき、夫はADHDかもしれないと気づく。さらに自分が「カサンドラ症候群」という症状にぴったり当てはまっているということにも。「相手の特性を知り、理解して、家族で支えあって」と書かれる書籍を読んで、「自分がすべてを引き受けなければいかないの?」と途方に暮れる。妻は「誰か助けて」と、誰にも言えない悲しみを抱えていた。




「ADHD夫婦の悩みの多くは、お互いが感じている“当たり前“のズレを解決できないまま、どちらか一方だけが我慢した結果、次第に気持ちが離れていく…ということがある」と、はなゆいさんはいう。「この漫画はその最初の一歩にある “当たり前“のズレがなぜ起きるのか、夫婦両方からの視点を描きました。夫側は、自分が気づいていなかった妻の努力や苦労、そしてその裏にある気持ちを知ることができ、妻側は、夫が“わざと”やっているのではなく『物事に対して違う捉え方をしている』ということがわかる。お互いの『見えない苦労』を知ることで声のかけ方や向き合い方が変わるきっかけになる、そんな作品を目指して描きました」と話す。
「最もこだわったのは、一筋縄ではいかない葛藤です。つらいときって、『○○さえすれば解決する』というシンプルな答えを求めがちだし、時に周りからもそういったアドバイスを受けることもあります。でも、実際の夫婦関係はそんなに単純ではなくて、問題を解決したら新しい問題が出てきますよね。たとえば、『夫が自覚してくれない』っていうのがとてもよくある相談なのですが、ADHDと診断されたからといって、すべての問題が解決するわけでもないんです。診断されたらされたで、新しい悩みが出てくる。そうすると『私だけが対策を考えるの?』『結局、変わらない?』『ADHDだから仕方ないの?』そのたびに、絶望して気持ちが離れる。でも、離れようとすると、何かが起きてやっぱり一緒にいようと思えたり。こうやって、希望と絶望を行ったりきたりする、心の揺れ動きこそが、多くの当事者夫婦が抱えているリアルな葛藤だと、インタビューを通して私自身も思いました。本作では、そうした葛藤を繰り返す中で、パートナーが自分の心の平和を少しずつ取り戻し、“自分の人生を生き直していく”過程を描きました。読んだ人が『自分だけじゃなかった』『また明日もやっていける気がする』と感じられ、何度も読み返したくなる——そんな本になれたらと思っています」と、はなゆいさん。
特に描くうえで難しかったところは、「自分自身がADHD当事者であるからこそ、パートナー側の『見えない苦労』を描くことが難しかった」という。「ADHD特有のミス——忘れ物、遅刻、軽はずみな発言など——これらについて、私はそうされても『なぜそうなってしまうのか?』を理解できてしまうがゆえに、『そういうものだよね、仕方ないよね』って気持ちになってしまいます。でも、ADHDを知らない人は、違う受け取り方をすることがあります。たとえば、 “怠慢” や “愛情不足”などなど。そして、違う受け取り方をすると、湧き上がる感情も変わる。この“受け取り方の違い”は、当事者だけでは到底気づけない部分で、実際にパートナーの方々にインタビューして初めて『ああ、こんなふうに感じてるんだ…』と、何度も驚かされました。同時にこれは私にとって、自分の行動が相手にどんな影響を与えていたのかを知る貴重な機会でもありました」
「この本は、ADHD当事者の方や、そのパートナーの苦労に焦点を当てました。といっても、ADHDだったら必ずこうなるという話でもないです。ただ、ADHDの特性は周りからわかりにくいので、どうしても “感覚や当たり前の違い”が生まれやすく、誤解や衝突につながりやすいんです。 私自身も、以前は自分の当たり前が人の当たり前とぶつかることがよくあって、それで相手を困惑させたし、自分自身も戸惑っていました。でも、少しずつ『なぜ自分はそうなるのか?』『どうしたらいいのか』を知っていく中で、衝突の根本の原因は、特性の認識不足にあったと気づけました。そのことを知って驚くほど生きやすくなりました。ご家族やパートナーとの関係で悩んでいたり、うまくいかない理由が知りたいと感じている方が、読み終わったあと、心が軽くなったり、前向きになれる本を目指しました。同じように悩まれている方に手に取っていただけるとうれしいです」
取材協力:はなゆい(@hanayuistudio)
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