縮小する日本市場と研究開発投資の停滞
一方で、日本の医薬品市場を取り巻く環境は厳しさを増しています。
医薬品市場における日本のシェアは、2010年には10%強であったものが、2023年には4.5%にまで低下しました。世界第2位と言われた時代もありましたが、現在は4位のポジションに転じています。
研究開発費の伸びも他地域に大きく後れを取っています。1990年代には日本も世界の医薬品研究開発において相当の割合を占めていましたが、2010年と2023年を比較すると、米国や欧州、中国との差は圧倒的に開いているのが現状です。
エルリヒ会長は、かつて世界の新薬の多くは欧州と日本から生まれていたと振り返ります。しかし現在、その優位性は米国に移り、多くの企業が米国への投資を強化していると指摘しました。
米国MFN政策がもたらす衝撃
こうした中、新たな懸念材料として浮上しているのが、米国の最恵国待遇(MFN)価格政策です。
この政策は、米国民が他国より高い価格で医薬品を購入することがないようにするというもので、米国以外の国の「フリーライド(ただ乗り)」に対抗する狙いがあるとされています。
日本の薬価制度には特有の構造があります。上市後は特許期間中であっても、改定時に薬価が下がる可能性があり、製品が成長すれば再算定で引き下げられ、さらに費用対効果評価によっても下がりうるという状況です。岩屋会長は「いずれの引き下げについても、メーカーとしては自分たちでコントロールできない部分がほとんど」と指摘します。
こうした日本の薬価が米国で参照されることになれば、世界全体の研究開発投資に影響を及ぼしかねません。EFPIA Japanが会員企業に実施したアンケートでは、米国のMFNがグローバルの価格戦略に影響を与えるかという問いに対し、回答した10社全てが「YES」と答え、日本国内で研究開発の中止や延期、上市計画の見直しといった影響がすでに出ている企業も複数あるといいます。

