●アメリカやイギリスなどで報道広がる
各メディアは「自分たちの知っていることから手を付け、すなわち『フィナンシャル・タイムズ』や『ウォールストリート・ジャーナル』はウォール街やシリコンバレーを揺るがす話、『バラエティ』(エンタメ産業誌)はハリウッドやセレブカルチャーに関する人々、『ニューヨーク・タイムズ』はほかの何よりも大統領が文書にどう出てくるかに、それぞれ焦点を当てた」(米コロンビア大『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』)。
『ニューヨーク・タイムズ』はさらに特集ページで「トランプへの言及」「文書に出てくる有力者」「スターマー(英首相)窮地」などの各コーナーを展開している。
同時に、デジタル技術のエキスパートたちも動いた。
文書内のエプスタインのメールのやりとりを、自分のGメールに格納されたかのような体裁で読め、人名などで検索できるサイト(https://jmail.world/)が開設され、『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』は「すばらしいウェブプロジェクト」と評価した。
米国外でも、英スターマー内閣関係者や王室関係者が登場したことに英メディアは敏感に反応。フランスやノルウェーでも、自国エリートの関わりが問題化している。

●日本メディアの動きが鈍い理由
一方、日本では『週刊文春』が千葉工業大学学長の伊藤穣一氏、森ビル、東芝に関する同文書での記述を指摘しているが、新聞やテレビの動きは鈍い。
政官界関係者が見つかっていない点は大きな違いではある。それを踏まえても、日本メディアの反応のゆるさには、いくつかの背景が考えられる。
まず、新聞・テレビ界はニュース判断に「前例踏襲」「横並び」「予定調和」が影響しやすい。これは私自身が30年現場にいた経験からの、反省も込めた実務感覚である。
警察捜査や国政、大型選挙など実績のある取材分野なら、昼夜を問わず取材し、真相を探し出し報じるルーティンが確立している。
だが、新しいテーマや視点にはきわめて慎重だ。悪く言えば、しばしば臆病で事なかれ主義に陥る。
今、大学で学生を見ていると、日本社会全体に通じる傾向を感じる。失敗を恐れず他人と違うことにまず挑む「ファーストペンギン」を見つけるのは容易でない。
横並びタイプが主流だ。その環境の中で、挑戦的で戦闘的なジャーナリストを育てていかなければならない。

