胃食道逆流症は、胃の酸が食道に逆流してしまい、胃や食道の痛み・不快感を引き起こす病気です。
薬物療法や生活習慣の改善で症状が緩和できますが、放置しておくと食道がんに繋がるおそれもあります。
今回はこの病気について、日常生活での注意点について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「胃食道逆流症」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
胃食道逆流症の再発とリスク

再発するのでしょうか?
この病気は、薬物療法や生活習慣の変更によって改善できますが、再発する可能性があります。治療を中断したり、生活習慣を戻したり、または治療効果が不十分だったりしたことが原因になります。再発を防ぐためには治療を完了し、薬物療法や生活習慣の変更を継続することが重要です。症状が再発する場合は医師に相談し、適切な治療法を決定しましょう。また手術を受けた場合は、手術後のフォローアップを受けることで、再発を防げます。
食事など日常生活で注意するはありますか?
この病気の治療には、生活習慣の変更も重要です。以下のような点に気をつけることが推奨されます。食事:腹部に詰め込み過ぎないように食事をとり、食事後は数時間寝かせるようにする。特に油っぽい食べ物・辛い食べ物・コーヒー・アルコール・タバコなどは避けるようにする
体重:過体重や肥満は胃食道逆流症の症状を悪化させるため、適量体重を保つよう努力する
睡眠:上体を高くするように寝る。例えば枕を多く使用するようにして、頭部を高くすることで胃の内容物が食道に戻らないようにする
スポーツ:食事後1時間以内に運動をすることを避ける
ストレス:ストレスは胃食道逆流症の症状を悪化させるため、ストレスを減らす方法を見つける
これらの生活習慣の変更によって、胃食道逆流症の症状を軽減できる可能性があります。ただし、個人差があり一概には言えないため、症状に合わせて調整することが大切です。また、自己判断ではなく医師に相談することを忘れないようにしましょう。
胃食道逆流症を放置するリスクを教えてください。
胃食道逆流症を放置すると、 食道癌のリスクが高まる可能性があります。胃食道逆流症によって食道に胃酸が侵入し炎症が長期間続くことで、食道の非常に細い部分にも影響を与え、胃食道逆流症を原因とする食道癌の発症率が高くなるのです。また食道粘膜の慢性的な炎症が引き起こされる可能性があり、食道狭窄や食道瘤などの異物感を引き起こす可能性があります。食道の傷害によって、食事を楽しめなくなる・食事による痛みや不快感を引き起こすことがあります。早期に発症した胃食道逆流症を適切に治療することが重要です。
さらに食道の炎症が長期にわたって続くことで、食道の形態が変化し、食道狭窄を引き起こす可能性もあるのです。胃食道逆流症は、適切な治療を受けないと、重篤な疾患に発展する可能性があります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
この病気は命に関わるようなことはまれですが、放置しておくと食事が楽しくなくなる、常に食道が痛むなど日常生活に支障が出てきますので早めに病院で治療をすることがおすすめです。また偏った食生活・強いストレス・不規則な睡眠時間などの要因はこの病気を引き起こす可能性があります。もし胃食道逆流症と診断されたら、
病気そのものの治療に併せて、自分の生活習慣も見直してみましょう。
編集部まとめ

胃食道逆流症は胃の酸が食道に戻ってきて胃痛や喉の痛み、咳などの症状を引き起こす疾患です。
胃から食道へ食物が逆流するのを防ぐバリア機能が低下することで発生し、胃や食道の痛み・不快感に悩まされることになります。
まだ胃や食道の機能が発達していない赤ちゃんにも起こる病気ですが、成人の場合は乱れた食生活・睡眠時間・ストレスが引き金になることも多いです。
早期発見すれば服薬や生活習慣の改善によって寛解しますので、もし胃部に不快感を覚える場合は、早めに病院へかかるようにしましょう。
参考文献
胃食道逆流症(日本小児外科学会)

