
奈良県御所市には、御所まちと呼ばれる古い町並みがあります。江戸から昭和の雰囲気感じるまちは、散策する人も少ない穴場の観光スポットです。近年には古民家を改装したカフェ、レストランも増えてきた御所まちを歩いてみませんか。
御所まちとは

御所(ごせ)まちは、奈良県御所市(ごせし)の中心部に広がる、古い町並みが見られる地区です。陣屋(じんや)と呼ばれる役所を中心に形成された陣屋町で、江戸から昭和にかけての伝統的な建物も多く見られます。また、家屋の間を流れている水路も当時のままに残っており、往時の姿が想像できます。
御所まちは、近鉄御所線の御所駅の東側一帯に広がっており、地区の中を流れる川の西側が商業都市、東側が寺内町となっています。こちらでは、近年カフェやレストランもオープンし、散策が楽しめるようになった西側について紹介します。
御所まちを歩いてみよう
御所まちを歩いてみましょう。古い民家や商店街など、どこか懐かしい雰囲気に出会えます。古民家カフェやレストラン、リノベーションした銭湯など、新しいお店も増えてきています。近鉄御所駅前などに観光案内所があるので、パンフレットをもらったり、情報収集すると良いかもしれません。
新地商店街

近鉄御所駅の前を通る国道24号を渡り、東に進むとあらわれる商店街です。鉄骨で組まれたアーケードがあり、レトロな雰囲気が漂います。営業している店舗は少ないですが、精肉店、喫茶店、小さな食料品店などが開いています。
御所まちと呼ばれるエリアもこのあたりから始まり、商店街内には、古くからある水路の環濠(かんごう)が見られます。
【スポット情報】新地商店街東川酒店

商店街を抜けた場所にある酒店です。御所の地酒を色々と取り揃えているので、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。銘柄は、御所まちに蔵がある油長酒造の「風の森」のほか、葛城酒造の「百楽門」なども取り扱っています。
【スポット情報】東川酒店御所まち 高札場

東川酒店の前の道を南に少し入ると、高札場(こうさつば)があります。高札場とは、江戸時代に幕府が決めた法度や掟書きを木の板札に掲げておく場所のことです。現在のものは、平成20年に復元されましたが、当時とほぼ同じ場所にあるそうです。
【スポット情報】御所まち 高札場背割り下水/環濠

御所まちを歩いていると、民家の間に狭い水路を見かけます。こちらは、御所まちが形成された頃に造られた、環濠(かんごう)や背割り下水です。
環濠は町の外周を囲んだお堀のことで、主に自衛や水利のために造られます。また、背割り下水は、町の内部に造られ、生活用水や雨水を排出する下水道のような役割を果たすと同時に、敷地を区画する役目も担っていたようです。
御所まちの環濠や背割り下水は、現在でも建設当初の場所にあり、石積みが残されている箇所もあるなど、保存状況が良いため、国土交通省の「循環の道下水道賞」を受賞しています。
モリソン万年筆&カフェ

モリソン万年筆&カフェは、御所まちにある町家カフェです。昭和中期に多くの人に愛された万年筆ブランド「モリソン」の跡地で営んでいます。

店内に入るとすぐ、雰囲気の良いカウンター席が並びます。夜はバーとして営業しているので、こちらでゆったりお酒を楽しむのも良さそうです。奥には、畳の間の席もあります。古い調度品も飾られているので、懐かしく感じる方もいらっしゃるでしょう。

ランチの代表的なメニューは、自家製のカレーです。バターチキンカレー(1,100円)は、20種類以上のスパイスを使用し、香り豊かに仕上げています。バターとヨーグルトにより、マイルドな風味になっているのが特徴です。

パスタメニューもおすすめです。倭鴨(やまとがも)の和風パスタ(1,500円)は、葛城山麓の養鴨場「鴨重」のブランド鴨肉を使用して作っています。出汁醤油味であっさりとしていながら、鴨肉の香ばしさも感じられる一品です。地元野菜や小さなおにぎりも添えられているので、一緒に味わってください。
その他、カフェタイムには、コーヒーやスイーツもいただけます。落ち着いた雰囲気の中で、季節のシフォンケーキ(600円)、定番ガトーショコラ(500円)を味わってみてはいかがでしょうか。
【スポット情報】モリソン万年筆&カフェ油長酒造

御所まちには、日本酒を醸造する酒蔵もあります。油長酒造(ゆうちょうしゅぞう)は、大阪府との境にある金剛・葛城山麓のこの地で、享保4年(1719年)に創業しました。油長とは珍しい屋号ですが、これは、もともと製油業を営んでいたことに由来します。

代表的な銘柄は、風の森(かぜのもり)です。御所市内にある地名の「風の森峠」が由来となる商品は、しぼってそのままの生のお酒を味わってもらうために誕生したもので、フレッシュな風味が存分に味わえます。

お酒は、品質管理の行き届いた特約店のみで販売されています。周辺では、さきほど紹介した東川酒店さんがもっとも近いです。こちらの蔵ではお酒は販売していないので、ご注意ください。
【スポット情報】油長酒造T-ブラン・カフェ

新しいカフェも開店しています。T-ブラン・カフェは、コーヒー好きのオーナーが2025年春にオープンさせたお店です。

明るい店内では、ネルドリップの美味しいコーヒーのほか、各種ドリンク、スイーツ、ホットサンドなどの食事メニューもいただけます。筆者はアイスコーヒー(500円)を注文しましたが、コクがありながらすっきりとした味わいで美味しくいただけました。小さなお菓子が付いているのがうれしいですね。

店内はカウンター席と窓に面したテーブル席があります。窓からは古い民家も見え、心が落ち着きます。御所まち散策の休憩などに、利用してみてはいかがでしょうか。
【スポット情報】T-ブラン・カフェ洋食屋ケムリ

洋食屋ケムリは、地元御所の食材をランチやディナーのコース料理で提供するレストランです。建物は、たばこ屋さんとして使われていた木造の民家をリノベーションしています。柱や梁をそのまま使い、昔の雰囲気を感じながら食事が楽しめるのが魅力です。
ランチは、前菜からスープ、メイン、デザートまで4品のコースと、7品のフルコースがあります。4品のコースはメインが選べます。料金はメインの料理によりますが、3,000円~4,000円程度です。
ディナーは、新鮮な食材をふんだんに使用したフルコースです。Aコースは、アミューズから鮮魚、鴨などのメイン、デザートまでの7品です。9品のBコース、オマール海老コースもあります。
【スポット情報】洋食屋ケムリ宿チャリンコ

宿チャリンコは、自転車屋さんの建物を改装してオープンした宿泊施設です。昭和レトロな雰囲気が残る建物には、サドル、ベル、ハンドル、ペダルといった自転車にちなんだ名前の客室が並びます。建物内は、現代的に改装され、共用スペースにはシャワーブースや温水洗浄便座もあるので、快適に過ごせそうです。
宿泊プランは、素泊まりから朝食付き、夕朝食付きまで選択できます。食事が付いたプランを選択すると、さきほど紹介した「洋食屋ケムリ」料理がいただけます。また、すべての宿泊者は、御所宝湯の銭湯に入り放題の特典が付いています。
【スポット情報】宿チャリンコ御所宝湯

かつてこの地で長く営業していた銭湯「宝湯」は、2008年に廃業しましたが、2022年に新たな経営者によって「御所宝湯」として再びオープンしました。
懐かしさを感じさせる浴槽などはそのままに、フィンランドサウナの施設を追加したり、御所市から望む葛城山・金剛山の山並みを銭湯絵として描くなど、多くの人が利用したくなるような工夫もされています。
フィンランドサウナでは、セリフロウリュが楽しめるほか、サウナ利用者だけが入れる露天の水風呂、葛城山からの風を感じながら休息できる「ととのいスポット」もありますよ。
【スポット情報】御所宝湯(GOSE SENTO HOTEL)新地 入船

入船(いりふね)は、御所宝湯から北に歩き、新地商店街を越えたあたりにある飲食店です。定食類が色々とありますが、人気があるのが秘伝スパイスとこだわりの出汁が自慢の「カレーうどん」です。

筆者もこちらで温玉カレーうどん(700円)をいただいてみました。カレーのつゆは、甘さはほとんどなく、出汁がきいた和風タイプです。麺は柔らかめで、スパイスの効いたつゆとよく絡み、美味しくいただけました。
こちらには、御所宝湯さんでお風呂やサウナを楽しまれた後に、立ち寄る方もおられます。メニューにも、湯上がりセット(各1,000円)が用意されています。内容は、ビールとおつまみ3種、サウナ愛好家に愛されるドリンク「オロポ」とチキンカツカレーのセットの2種類です。
【スポット情報】新地 入船御菓子司 あけぼ乃

散策の最後には、お土産を買って帰りませんか?近鉄御所駅そばにある御菓子司 あけぼ乃は、明治18年創業の和菓子屋さんです。
定番のお菓子は、葛城路(1個194円)です。黄身餡のなかに、栗の甘露煮が1個まるごと入ったお饅頭で、名前もこの地域にちなんだものなので、お土産に適しているでしょう。甘さを控えた餡を、カリッとした生地で包んだ、かりんとう饅頭(1個105円)もおすすめです。

近年では、新感覚の和菓子や洋菓子にも力を入れておられます。特に人気があるのが季節ごとに変わるフルーツ大福です。冬から春にかけての「プレミアムいちご大福」、夏から初冬の「ぶどう大福」、通年購入できる「チョコバナナ大福」もあります。
筆者はこちらで、アップルパイを購入してみました。スティック状のパイはサクサクとした食感で、りんごもたくさん入っており、美味しくいただけました。
【スポット情報】御菓子司 あけぼ乃