ドーパミンとは?メディカルドック監修医がドーパミンの働き・多い人の特徴・不足すると現れる症状・不足する原因・出し方などを解説します。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
「ドーパミン」とは?

ドーパミン(Dopamine)とは、私たちの脳内で情報の受け渡しを行っている神経伝達物質の一種です。一般的には「快楽物質」や「幸せホルモン」と呼ばれることが多いのですが、医学的・脳科学的な視点から見ると、単に気持ちよくなるための物質ではありません。
ドーパミンは、私たちが生きていくために不可欠な「意欲(やる気)」「学習」「運動の調節」そして「報酬への期待」を司る、「人生のエンジン」のような役割を果たしています。
ドーパミンは多すぎても少なすぎても心身に影響が出るため、その仕組みを正しく理解し、適切にコントロールすることが、現代社会を健康に生き抜くための鍵となります。
ドーパミンは、脳の「報酬系」と呼ばれる快楽を感じる回路で中心的な役割を果たしています。美味しいものを食べたり、SNSで「いいね!」がついたり、目標を達成したときに嬉しいと感じるのは、背景でドーパミンが分泌されて脳が喜びを学習しているためです。
一方で、類似して“幸せホルモン”と呼ばれる物質に「セロトニン」があります。セロトニンはドーパミンの働きを制御して精神を安定させる作用があり、ドーパミンが「快感・やる気(アクセル)」を司るのに対し、セロトニンは「安心・安定(ブレーキ)」に関与すると考えると分かりやすいでしょう。
ドーパミンの働き

運動機能のコントロール
私たちがスムーズに歩いたり、手先を器用に動かしたり、姿勢を維持したりできるのは、脳の「大脳基底核」という場所でドーパミンが適切に働いているおかげです。 ドーパミンは、筋肉を動かそうとする指令に対し、アクセルとブレーキを微調整して、動作を滑らかにする潤滑油のような役割を担っています。この機能が低下すると、身体が固くなったり、震えが出たりする運動障害が生じます。
やる気と報酬系(モチベーション)
「勉強を頑張ったら褒められた」「仕事を達成して報酬を得た」といった快い経験をすると、脳内でドーパミンが放出されます。すると脳は「これをやると良いことがある(報酬が得られる)」と学習し、次もその行動を繰り返そうとする意欲が湧きます。これを「報酬系」と呼びます。 重要なのは、ドーパミンは実際に報酬を得た時だけでなく、「これから良いことが起きそうだ」と予測した時(報酬予測)に最も多く分泌されるという点です。旅行の計画を立てている時にワクワクするのはこのためで、ドーパミンは私たちを行動へと駆り立てる原動力になります。
認知機能と記憶(ワーキングメモリ)
ドーパミンは、脳の最高司令塔である「前頭葉(前頭前野)」にも深く関わっています。ここでは、物事を順序立てて考えたり、注意を集中させたり、情報を一時的に記憶して処理する「ワーキングメモリ(作業記憶)」の働きを支えています。 仕事の段取りを組んだり、集中して複雑な作業を行ったりするために欠かせない物質であり、この領域でのドーパミン活性が、知的生産性や実行機能に直結しています。
学習と強化(強化学習)
私たちが新しいスキルを身につけたり、習慣を形成したりするプロセスにもドーパミンが関与しています。自分の行動の結果が予測より良かった場合(ポジティブな予測誤差)、脳内でドーパミンが放出され、その行動パターンが脳の回路に強く刻み込まれます。 これは「強化学習」と呼ばれるメカニズムで、スポーツの上達や勉強の習慣化などは、このドーパミンの働きによるものです。一方で、悪い習慣(過食やギャンブルなど)も同様のメカニズムで強化されてしまうため、注意が必要です。
ホルモン分泌の調整
少し専門的になりますが、ドーパミンは脳の下垂体という部分に働きかけ、全身のホルモンバランスを調整する役割も持っています。具体的には、母乳を作るホルモンである「プロラクチン」の分泌を抑制する働きがあります。 また、腎臓の血管を拡張して血圧を調整したり、消化管の動きを調整したりする末梢(脳以外)での作用もあり、全身の生理機能維持に関わっています。

