古田新太、とにかくバカをやって目の前の人を喜ばせたい…“現場”への愛情【てれびのスキマ】

古田新太、とにかくバカをやって目の前の人を喜ばせたい…“現場”への愛情【てれびのスキマ】

■どんなに忙しくても365日酒を飲む

古田新太を慕う俳優は多い。しかし、彼と一緒に呑みたければ、三軒茶屋や下北沢の居酒屋を探し回るしかない。いまだに携帯電話を持っておらず、連絡がつかないからだ。小栗旬や松本潤は探すのが上手いが、ムロツヨシはよく外すという(「あちこちオードリー」2025年8月20日テレ東系)。

どんなに忙しくても365日、酒を飲む。だが、仕事に遅刻等はしない。なぜなら、酒を止められてしまうからだ(「サワコの朝」2014年1月11日TBS系)。そのため、舞台のときは、朝、劇場の前で寝ることさえあったという(「とんねるずのみなさんのおかげでした」2013年9月5日フジテレビ系)。

「芝居とお酒とたばこならどれを選ぶか?」と訊かれたときは、きっぱりこう答えている。「どれかを選ばないとってなったら、死にます。はい。お酒、たばこ、芝居、死ぬだったら、死ぬを選びますね。どれも辞める気がないので」(「日刊スポーツ」2022年1月6日)

■ミュージカル俳優を志した学生時代

好きなものはとことん好き。それが古田新太だ。彼は子供の頃からハードロックが好きだった。中でもKISSに憧れ、彼らのアルバムタイトル「Hotter Than Hell(地獄より熱く)」が座右の銘だという(「オー!!マイ神様!!」2018年2月26日TBS系)。同じくらい憧れたのがジャイアント馬場だった。

ロックミュージシャンかプロレスラーになりたい。そんな夢を抱いていた古田は小学校の行事でミュージカルを見た。はじめは退屈だなあなどと思っていたが、役者たちは弁護士などを自由に演じていた。そうか、ここならミュージシャンにもプロレスラーにも自由になれるんだ! そうしてミュージカル俳優を志した。

大学ではアングラ劇団に入っていたが、先輩の渡辺いっけいに「儲かるぞ」と誘われ「劇団☆新感線」に入団。古田は「アクションやりましょうよ」「バンド入れましょうよ」などと提案し、自分が好きな「歌を歌いながらアクションする」劇団に変化させていった(「あちこちオードリー」前出)。

だが、劇団ではまったく儲からなかった。「35までノーギャラですからね、僕。劇団からの金は一銭ももらってない。劇団から金なんてもらえないと思ってました。『鳥人間コンテスト』やと思ってましたもん。賞金のない『鳥人間コンテスト』」(「チマタの噺」2017年10月31日テレ東系)

■現場の人たちをいかに笑わせるか

だからテレビやラジオに「バイト」感覚で出るようになった。「商業主義に魂を売った」などと周りに言われることもあったが、局から金をもらうのと、バイト先から時給をもらうのと何が違うんだと思っていたから、まったく気にならなかった。

「これを演ってくださいと言われたら『はい』と言える人が役者」(「オリコンニュース」2019年4月20日)だという信念で、来た仕事は断らないスタンスで続けた結果、「個性派俳優」と呼ばれるようになった。

「俺、ドラマとか映画とかも、音声さん笑かすことしか考えてない」(「あちこちオードリー」前出)と語るように、古田のもうひとつの信念が“現場”を大切にすること。「始まっちゃったら一生懸命、監督のニーズに応える。あとは場が和めばいい」(「オリコンニュース」前出)と現場の人たちをいかに笑わせるかに腐心する。

だから「収録のときは怒られてもいいからふざけとこう」と考える。「(演出家に)やめろって言われたら、必ず即やめる。また別のふざけ方をする。ふざける引き出しだけはいっぱい持っておこう」と(「スイッチインタビュー」2017年11月18日NHKEテレ)。

■「舞台俳優」としての誇り

とにかくバカをやって目の前の人を喜ばせたい。そこには、「舞台俳優」としての誇りがあるに違いない。「お客さんありきだから。お客さんが最後立ち上がってわーって拍手してくれたりとか、下ネタいってゲラゲラ笑うとか、寝ている客を起こせる距離っていうのが好きなんだよね」(「日刊スポーツ」前出)

古田は、2024年に「第45回松尾芸能賞」優秀賞を受賞した。その授賞式には帽子を被ってやってきた。なぜなら、酒に酔って家で転び、頭をぶつけ50針ぬっていたからだ。そのスピーチで彼はこう宣言した。

「もともとアングラ劇団の人間です。ずっと小っ恥ずかしい芝居ばかりやってきてまして、もうすぐ60歳になろうとしてますけども、これからもまだまだ小っ恥ずかしい芝居をやっていこうと思っております」(「オリコンニュース」2024年3月29日)

文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「王者の挑戦 『少年ジャンプ+』の10年戦記」

※『月刊ザテレビジョン』2025年11月号

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