歯性上顎洞炎は虫歯や歯周病などの口腔内の問題が引き金となって起こる病気です。
症状によっては、痛みや違和感など普段の生活に支障をきたすものもあります。しかし、自覚症状が少なく、気付きにくいケースもあります。
歯性上顎洞炎を起こさないためにも、原因や治療方法・予防方法を知ることが大切です。
そこで今回は、歯性上顎洞炎になる原因や症状・治療方法・予防方法を詳しく解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「歯性上顎洞炎」の症状・原因はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修歯科医師:
熊谷 靖司(歯科医師)
熊谷歯科医院 院長
歯性上顎洞炎とは

歯性上顎洞炎とはどんな病気ですか?
上顎の虫歯や歯周病などの細菌が上顎洞という空洞に入り込み膿が溜まり炎症を起こす病気のことです。
副鼻腔炎(蓄膿症)ともいわれ、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌・大腸菌などさまざまな細菌によって引き起こされます。
上顎洞炎は歯による炎症のほかに鼻から起こる上顎洞炎もあります。
どちらも上顎洞で炎症が起こるものの、歯性上顎洞炎は原因となる歯のある方にだけ現れ、上顎洞炎は両方に現れるのです。
症状について教えてください。
症状は主に「顔周辺」と「全身」に現れやすいです。
顔周辺の症状として、以下の症状などが挙げられます。
(原因歯がある方のみ)波打つような痛み
歯茎の違和感
振動により歯が響く
頬の違和感や痛み
鼻詰まり
粘度のある黄色い鼻水
鼻から悪臭がする
眼痛
頭痛(偏頭痛を含む)
次に全身症状としては、以下の症状などがみられます。
発熱
倦怠感
食欲不振
歯性上顎洞炎は急性と慢性に区別され、急性歯性上顎洞炎の場合は強く症状が現れる傾向にあります。
慢性歯性上顎洞炎も同じような症状が現れますが、慢性化していることもありご自身では気付きにくいことも多いです。
原因を知りたいです。
前述のとおり、歯性上顎洞炎は虫歯や歯周病などの口腔内での問題が原因です。
上顎の奥歯と上顎洞の位置は近く、治療せず放置された虫歯や歯周病の細菌は歯の根管を通り上顎洞に膿が溜まり炎症を起こします。
治療に時間が取れず放置している虫歯がある方は、現在は症状がなくてもいずれ発症してしまう可能性が高いです。
歯性上顎洞炎が関係している病気はありますか?
歯性上顎洞炎が引き金となった細菌が関係し、ほかの病気を招くことがあります。
中耳炎や喘息などの呼吸器系の病気が多くみられます。
上顎洞は目や頭といった重要部分にも近いため、失明や脳腫瘍などの重篤な病気を合併することも稀にあるため、注意が必要です。
放置するリスクを教えてください。
痛みが一時的に消失し放置してしまう方もいらっしゃるでしょう
前述でもご説明しましたが、放置すれば細菌がほかの部位に移動しさらに状態を悪くしてしまう可能性が高いです。
時間の経過とともに症状が消失したとしても、根本的な原因は改善されていません。
放置せず、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。
死亡率はどのくらいですか?
歯性上顎洞炎で死亡する確率はほとんどありません。
しかし、治療を放置したことで上顎洞に入った細菌が血液に入り込み全身に回ることで、違う病気を合併し死亡する確率が高まります。
歯性上顎洞炎が原因で合併症を引き起こすと、その症状を治療するために入院などが必要になる可能性もあります。
編集部まとめ

意外と身近な病気である歯性上顎洞炎ですが、放置しておけば恐ろしい合併症を招く危険性があります。
しかし、違和感を感じた時点で病院を受診すれば、病気自体は恐ろしいものではありません。
虫歯がある方は治療をし、治療がない方は定期検診を受けるなど、体調管理と同じように歯の管理をするようにしましょう。
参考文献
歯性上顎洞炎|神戸市立医療センター西市民病院

