もんでも治らない「肩こり」の原因はご存じですか? なりやすい人の特徴・対処法も解説!

もんでも治らない「肩こり」の原因はご存じですか? なりやすい人の特徴・対処法も解説!

いくら肩をもんでも、すぐにこりが戻ってしまう……。そんなあなたは要注意! じつはその肩こり、肩そのものではなく「腹筋」や「股関節」の衰えが原因かもしれません。体のつながりを知れば、つらい肩こりの本当の改善法が見えてきます。「肩こりラボ学芸大学」の丸山先生に解説していただきました。

丸山 太地

監修鍼灸師:
丸山 太地(鍼灸師)

日本大学文理学部体育学科卒業、東京医療専門学校(現・東京呉竹医療専門学校)鍼灸マッサージ科卒業。2012年、東京都目黒区に「肩こりラボ学芸大学」を開院。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。臨床実習指導者、中学校・高校保健体育教員免許。

肩をもんでも治らないのは腹筋や股関節の衰えが原因?

肩をもんでも治らないのは腹筋や股関節の衰えが原因?

編集部

肩こりがひどくて、肩をもんでいるのですが改善しません……。腹筋や股関節も関係していると聞きましたが、本当なのでしょうか?

丸山先生

はい、大きく関係していると考えます。肩と腹筋や股関節は離れているため、意外と思うかもしれません。しかし実際、肩は体幹や骨盤、股関節と連動して動いています。腹部深層筋群(特に腹横筋)や股関節周囲筋(大腰筋・殿筋群など)は姿勢保持に寄与しています。これらの機能低下は骨盤や背骨の配列(アライメント)を乱しやすく、その結果として肩周囲への負担が増大します。つまり、腹筋や股関節まわりの筋力が落ちると姿勢を保持する力が弱くなり、その結果、肩に余計な負担がかかるようになります。そのため、負担をかけている大元を対処せず、症状の出ている肩をいくらもんでも根本的な解決にはならないのです。

編集部

具体的に、どのような人がなりがちですか?

丸山先生

「座りっぱなしの時間が長い人」や「運動不足の人」に多い傾向があります。特にデスクワーク中心の人は、腹筋や股関節周辺の筋肉が衰えがちで、猫背や反り腰などの姿勢不良を招きやすくなります。ただし、「立ち仕事だから大丈夫」というわけではありません。立ち仕事でも同じ姿勢を長く保持したり、同一作業を繰り返したりする人は筋肉を使わず、省エネで動作をするようになります。そのため、体を動かしているように思っていても、筋肉が衰えていってしまうことは少なくありません。

編集部

「肩こりの原因は肩だけにある」と思い込んでいる人は多いと思います。

丸山先生

「肩がこる=肩を徹底的にほぐせばいい」という思い込みが根強くありますが、原因の多くは体の別の部位に隠れています。肩こりの原因の一部は、肩だけではなく、全身のバランスにあります。肩はあくまで症状が出やすい場所というだけで、「根本的な原因はほかにある」と理解する必要があるのです。

編集部

腹筋や股関節を鍛えると、肩こりは改善するのでしょうか?

丸山先生

はい、いくら揉みほぐしても良くならないケースの多くに改善が期待できます。腹筋群がしっかり働くと上半身を無理なく支えられるようになり、肩の過緊張の軽減につながります。特に腹横筋や大腰筋などの「インナーマッスル」が大切です。また、股関節が柔軟に動くことで骨盤の傾きが改善され、姿勢が安定します。腰を力ませて骨盤を無理に立たせようとせず、重心移動とインナーマッスルの働きによって背骨を無理なく支えることが大切です。このように、股関節を支点として体幹と下肢を協調的に動かす運動様式を「ヒップヒンジ」と言います。ヒップヒンジ動作を体得した結果、日常生活で、体幹と下肢を連動させてつかえるようになることで、首・肩の負担が減り、肩こりが改善していくと私たちは考えています。

肩こりのメカニズム

肩こりのメカニズム

編集部

腹筋が弱いと、なぜ肩に負担がかかるのでしょうか?

丸山先生

腹筋と一口に言っても複数あります。腹部にある筋肉、特に腹横筋や大腰筋などのインナーマッスルは、姿勢を保つ土台として重要です。これらの筋肉が弱まると姿勢が崩れやすくなり、頭を支えるために肩や首の筋肉が無理に働きます。これが慢性的な緊張を生み、肩こりを引き起こします。つまり、肩こりの「こり」の部分は、バランスを取るための代償動作で酷使されており、疲労が蓄積していると考えられるのです。

編集部

股関節の柔軟性と肩こりの関係についても教えてください。

丸山先生

股関節の柔軟性が低いと、前述したヒップヒンジができなくなってしまいます。すると、骨盤の前傾や後傾が動作に応じて適切にできなくなり、ほかの部分が無理して動きを補おうとして、姿勢も崩れていってしまいます。その結果、背骨や肩甲骨の動きも制限され、肩や首の筋肉に過剰な負担がかかり、肩こりにもつながる可能性があるのです。

編集部

肩をもむと一時的に楽になるのはなぜですか?

丸山先生

実際のところ、厳密な意味で、肩をもむと楽になる理由は明らかにされていません。現時点の一般的な解釈としては、「肩をもむことで一時的に血流が改善し、筋肉や筋膜の緊張が和らぎ、動きが良くなる」と考えられています。ただし、原因がほかにある場合は、すぐに元通りになります。姿勢や筋力のアンバランスを見直さない限り、根本的な改善は期待できません。

編集部

肩こりが慢性化すると、どうなるのですか?

丸山先生

首や肩のこりが慢性化すると、単にその部分につらさや痛みが出るだけでなく、全身的な不調が出てしまうこともあります。過緊張により、頭痛、めまい、集中力の低下などが生じることがありますし、自律神経も乱れやすくなり、病気ではないけれど病気のような症状が出てくることもあります。

配信元: Medical DOC

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