お酒を飲むとラーメンを食べたくなる原因とは?メディカルドック監修医が食べるメリット・デメリット・食べ続けると発症しやすい病気や対策などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
お酒を飲み続けると体内で何が起こる?

お酒を飲むと、体内ではまずアルコールが胃や小腸から吸収され、血液を介して全身に運ばれます。アルコールの大部分は肝臓で分解され、アセトアルデヒドという有害な物質を経て、最終的に水と二酸化炭素になります。この分解過程では肝臓に大きな負担がかかり、同時にビタミンB群などの栄養素も多く消費されます。
また、アルコールには利尿作用があるため、尿として水分や電解質が排出されやすくなります。その結果、体内は軽い脱水状態となり、ナトリウムやカリウムのバランスも崩れがちです。血糖値にも影響が及び、飲酒後しばらくすると血糖が下がりやすくなります。これらの変化が重なることで、「何か食べたい」「塩分や炭水化物が欲しい」という欲求が生じやすくなります。
お酒を飲むとラーメンが食べたくなる原因

飲酒後に「なぜかラーメンが食べたくなる」と感じるのは、単なる気分の問題ではありません。体内で起こる複数の生理反応が重なった結果と考えられます。
塩分不足を補おうとする反応が起こる
アルコールには利尿作用があり、飲酒後は尿量が増えることで体内の水分だけでなく、ナトリウムなどの電解質も失われやすくなります。こうした状態では、体は水分や塩分のバランスを回復させようとする生理的反応を起こし、自然と「塩味のあるもの」を欲するようになります。
特にナトリウムは、血液量の維持や神経・筋肉の働きに欠かせない成分です。飲酒によって相対的な塩分不足が生じると、口渇感や倦怠感を伴うことがあり、塩分を含む食事によってそれらを補おうとします。スープに多くの塩分を含むラーメンは、こうした欲求を満たしやすく、飲酒後に強く惹かれやすい食品といえるでしょう。
血糖値が低下する
アルコールは肝臓で分解される過程で、体内のエネルギー代謝に大きな影響を及ぼします。アルコールはまずアセトアルデヒドを経て酢酸へと酸化され、最終的にアセチルCoAとなりますが、この一連の反応の過程で、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)が還元型(NADH)へと変換されます。その結果、肝臓内では NADH/NAD比が上昇します。
NADとNADHは、糖新生やトリカルボン酸(TCA)回路など、生命維持に重要な代謝反応に関与しています。アルコールを代謝する際にNADH/NAD比が過剰に高まると、これらの代謝経路は抑制されます。特に肝臓で行われる糖新生が抑えられることで、体は血糖値を十分に維持できなくなり、飲酒後に血糖値が低下しやすい状態となります。
このようなメカニズムで、血糖値が低下すると、脳や筋肉はエネルギー不足を補うため、炭水化物を強く求めるようになります。ラーメンのように糖質を多く含む食品は、低下した血糖値を比較的速やかに回復させるため、飲酒後に無性に食べたくなる背景には、こうした代謝の変化が関与していると考えられます。
アルコールによる判断力・抑制力の低下
アルコールには、中枢神経に作用して脳の抑制機能を弱める働きがあります。特に、理性や自己制御を司る前頭前野の働きが低下することで、行動のブレーキがかかりにくくなります。その結果、普段であれば「夜遅いから控えよう」「カロリーが高いからやめておこう」と判断できる場面でも、その判断が甘くなりやすくなります。
また、アルコールは快楽や満足感に関わる脳の報酬系にも影響を及ぼします。飲酒によって気分が高揚した状態では、「おいしいものを食べたい」「満足感を得たい」という欲求が強まり、味が濃く、脂質や塩分を多く含む食品がより魅力的に感じられます。ラーメンは、こうした条件を満たす代表的な食べ物であり、飲酒後に選ばれやすい理由の一つといえるでしょう。
このように、飲酒後にラーメンを食べたくなる背景には、単なる意志の弱さではなく、アルコールによる脳機能の変化が関与していると考えられます。

