母とスマホで連絡を取り、近くの喫茶店に行き話をした。真相を告げた時、母はもちろんすぐには信じなかった。しかしボイスレコーダーアプリに録音された会話を聞き、表情を強張らせる。音源が終わる頃には、唇を噛んでいた。
「呆れたものね…。もうお父さんたちにはうんざりだわ」
母は、そっと語りだす。父と結婚してから、どれだけ自分が耐えてきたのかを。転職と酒ばかりの父。収入が不安定だったので、母は仕事と家事を必死に両立した。それなのに昔ながらの亭主関白ぶりを発揮し、また姑からの嫁いびりも見て見ぬふりどころか、祖母の肩を持つ。うなだれる母に私は告げた。
「お母さん、もう家を出ちゃいなよ。私たち家族と一緒に暮らそうよ」
それは熟年離婚への後押しだった。母は今年60歳。もうすぐ定年退職を迎える。1つ年上の父はすでに退職しており、家でだらだらしてるだけ。そんな父を退職後も母が世話し続ける必要はない。
「ミノルさんは嫌じゃないかしら」
婿の心配をする母はやっぱり遠慮深い。不安を払うように、強く母の手をにぎる。
「大丈夫、実は以前から少し相談してて、ミノルもお母さんならいいって」
私の言葉は大きな力になったようだ。そして母は、予想以上の行動力を見せたのだ―――。
母と娘の固い決意
実の祖母と父から泥棒扱いされた美鈴…。当初、祖母の認知症の可能性を考え、本気で心配しました。ところが、父は祖母の肩をもつばかりで、認知症の検査も受け入れません。
そしてその後、少しずつボロが出始めます。「盗まれた3万円」を母が立て替えたのですが、納得できない美鈴は、父と話し合いをし、母に3万円渡すよう託します。ところが、母はこのお金を受け取っていないそう。さらに、最近やけに羽振りがいい父…。
そんな矢先、祖母と父が「うまくいった」と話しているところに遭遇。すぐに母に伝えます。そして、母は…。
積年の恨み…母が下した重い鉄槌
決意した母の行動は早かった。すぐに弁護士に相談し、民事訴訟への準備を行う。今回の件で、父と祖母に対して不当利得返還請求、また精神的苦痛を感じたという理由で慰謝料請求も起こす。そう、母は重い鉄槌を彼らに下すことにしたのだ。
相談した弁護士は優秀で、盗られたお金は無事に返されたうえ、30万円の慰謝料を請求し、支払いを約束させた。すべてを終えた母は穏やかに言う。
「実際、お金はいらないのよ。今後一切関わらないでもらえるならね」
離婚による財産分与を済ませた後、母は私たちの家に引っ越してきた。2歳の娘は祖母と一緒に住めることを素直に喜び、私もうれしく思う。夫もまた、母の手料理が好みだったようで夕食がますます楽しみになったそうだ。
離婚だけではなく、民事訴訟を起こした母。長年ガマンしてきたことが爆発し、今回、重い制裁を下すことにしたようです。
そして、美鈴一家とともに新しい生活を始めます。

