『エボラ出血熱』の正体は「出血」ではない? “重症”の真実を医師が解説

『エボラ出血熱』の正体は「出血」ではない? “重症”の真実を医師が解説

「出血熱」という名称から大量出血を想像されがちですが、実際の重症化の中心は多臓器不全です。出血症状は一部の患者に見られるものの、その背景にはウイルスによる血管障害があります。重症化の仕組みと症状の特徴を知ることは、病態理解に欠かせません。

吉野 友祐

監修医師:
吉野 友祐(医師)

広島大学医学部卒業。現在は帝京大学医学部附属病院感染症内科所属。専門は内科・感染症。日本感染症学会感染症専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医。帝京大学医学部微生物学講座教授。

エボラ出血熱の重症化と出血症状

病状が進行すると出血症状が現れることがありますが、「出血熱」という名称から想像されるほど、すべての患者に出血がみられるわけではありません。実際には、明らかな出血が確認されるケースは全体の半分以下とされており、重症化の中心は臓器機能の低下や多臓器不全であると考えられています。

出血症状の特徴と発現メカニズム

エボラウイルスは血管の内皮細胞を攻撃し、血管壁の機能を損なわせます。これにより血管の透過性(血管の壁から水分や血液が漏れ出しやすくなる状態)が高まり、血液成分が血管外に漏れ出すようになります。同時に、血液凝固に関わる因子が消費されることで、止血機能が低下します。

初期の出血症状としては、歯茎からの出血や鼻血が見られることがあります。病状が進行すると、注射部位からの止まりにくい出血、血便や血尿、吐血などが現れる場合もあります。皮膚に点状出血や紫斑が生じることもあり、これは皮膚の小さな血管から血液が漏れ出ている状態を示しています。重症例では内臓からの出血も起こり得ますが、大量出血による死亡よりも、多臓器不全による死亡のほうが多いとされています。

多臓器不全への進行と予後に影響する要因

エボラ出血熱の重症化では、複数の臓器が同時に機能不全に陥る多臓器不全が生命を脅かす主要因となります。肝臓や腎臓の機能が低下し、血液検査では肝酵素の上昇や腎機能の悪化が確認されます。循環不全によって血圧が低下し、ショック状態に陥ることもあります。意識レベルの低下や錯乱、けいれんといった神経症状が現れる場合もあり、これは中枢神経系への影響を示しています。

予後を左右する要因としては、発症時のウイルス量、年齢、基礎疾患の有無、医療へのアクセスの早さなどが挙げられます。若年層や高齢者は重症化しやすく、早期に適切な支持療法(ウイルスを直接倒すのではなく、点滴などで脱水を防ぎ、体力を維持して自分の免疫で回復するのを助ける治療)を受けられるかどうかが生存率に大きく影響します。ただし、これらは傾向であり、個々の患者さんの状態や環境によって経過は異なります。

まとめ

日本に住む私たちにとって、エボラ出血熱は直接的な脅威ではありませんが、グローバル化が進む現代において無関係ではありません。流行地域への渡航を予定されている方は、現地の情報を確認し、適切な予防行動を取ることが大切です。帰国後に発熱などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡し、渡航歴を伝えましょう。正確な情報に基づいた冷静な対応が、自分自身と周囲の方々の健康を守ることにつながります。

参考文献

厚生労働省「エボラ出血熱」

世界保健機関(WHO)「Ebola virus disease」

東京都感染症情報センター「エボラ出血熱」

ウイルス性出血熱への行政対応の手引き 第二版

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。