
北大路欣也主演で藤沢周平の小説を映像化した「三屋清左衛門残日録」シリーズの最新第9作「三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆」が、3月7日(土)夜7:00より時代劇専門チャンネルにて放送される。これを記念して、本作の舞台挨拶付き特別上映イベントが、2月19日に東京・TOHOシネマズ日比谷にて実施され、北大路をはじめ、佐藤流司、山谷花純、山下智彦監督が登壇した。
本作は、2016年から続く人気時代劇シリーズ。前藩主用人の職を退き、隠居した三屋清左衛門(北大路)の第二の人生を、身の回りに起こるさまざまな出来事と共に描く。
■「三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆」あらすじ
家族との穏やかな日々を大切に過ごす清左衛門は亡き妻の墓参の帰り、小さな墓前に立ち尽くす若い夫婦、結城友助(佐藤)と妻・はなえ(山谷)に出会う。2人は、1年ほど前に幼い息子を亡くし、深い悲しみに沈んでいた。友助は、はなえを思いやり、励ましとして絹の着物を贈り、はなえも一時は元気を取り戻したように見えていた。
一方、富商・能登屋(上川隆也)の支援を受け進められていた藩の開墾工事が突如中止に。その指揮を執っていた佐伯熊太(伊東四朗)の旧友・榊甚左衛門(藤岡弘、)が切腹したとの報せが届く。清左衛門と熊太は榊の死に疑問を抱き、その真相を探り始める。そんな折、藩が倹約令を出す。それは友助とはなえの生活にも暗い影を落とし、やがて2人の身にある事件が起こる。そして清左衛門は哀しき真相にたどり着くことになる。
■佐藤「見たことあります?謙遜しすぎて怒る人(笑)?」
盛大な拍手で迎え入れられた4人が挨拶を終えると、司会者が「大先輩である北大路から何を学んだか」という質問を投げかける。すると佐藤は、「この質問、ダメなんですよ。毎回、欣也さんが『いや、僕から学ぶことなんてないよ』って言うんです。見たことあります? 謙遜しすぎて怒る人(笑) いらっしゃるんですよ。欣也さんは腰が低すぎて…」と会場を沸かせつつ、「個人的には、欣也さんがセリフや場面を受けているときのお芝居の説得力がものすごくて。格好よくセリフを言うのは役者の第一関門ですが、セリフを発していないとき、そこにいるだけの時間が、役に深みを持たせるのに大事な時間だと僕は思っていて。そのときの欣也さんの佇まいや風格が、三屋清左衛門という役に息吹きを与えていて、本当に勉強になりました」と熱弁した。
■山谷「欣也さんはものすごく謙虚」
これに対し北大路は、佐藤の立ち回りについて「動きがすごい。ダンスやスポーツの経験もあるのかもしれませんが、彼は特別な訓練をしたか分からないけれど、本当に綺麗な動きをする。何かおかしいところがあったら言ってやろうかなと思ったけれど、全然ないんですよ(笑)。すごいなと思って、私の方が若い方々から教わっています」と手放しで称賛。
また山谷は、北大路の現場での姿に感銘を受けた様子で、「カメラに立っていないときの欣也さんも、ものすごく謙虚なんです。スタッフさん一人一人に対しての愛情の向け方や感謝の気持ちの持ち方を、私は少し離れたところから眺めていて。これをずっと続けてきた方が、こういう誠実な作品と巡り合うことができるんだなと現場ですごく感じました」と真摯に語った。
そんな後輩たちの言葉を受けた北大路は、「この作品とは関係ない話ですが…」と前置きし、自身の若かりし頃の経験を披露。映画「悪名 縄張荒らし」(1974年)で共演した勝新太郎から教わったという「チン、トン、シャン」の三味線の音に関する秘話を話し始め、「誰でも音は出せる。だけど『チン』と『トン』の間にある、この無音のときが大事なんだ。そこに何を思うかで次の音が決まる。セリフも同じだ。点と次のセリフの間の無音のところで何を思うかによって次が決まるんだぞ、と勝新太郎さんから教えられました。そのことは、どんなときでもふっと思い出されます。私も若いときに、そういう経験をさせてもらったんですよね」と、佐藤が指摘した“セリフのない時間の重要性”に通ずるエピソードを優しく語り聞かせる。
■山下監督「(藤岡弘、さんに)『頼むから勘弁してください!』と頭を下げた」
メガホンをとった山下監督も、佐藤と山谷の芝居を「僕の説明を簡単に凌駕して素晴らしかった」と絶賛。さらに、本作で切腹シーンに臨んだ藤岡弘、の逸話も明かす。「打ち合わせで『(小道具ではなく)本身(本物の刀)を持ってきてくれ』と言われまして、僕が『頼むから勘弁してください!』と頭を下げたんですよ」と藤岡の役に対する凄まじい執念を笑いながら振り返り、会場を驚かせた。
イベント終盤には、2月23日(月)に83歳の誕生日を迎える北大路へ、サプライズの花束とケーキが贈られた。さらに、清左衛門の親友・佐伯熊太役の伊東四朗からもお祝いのビデオメッセージが届くと、北大路は驚きと喜びに満ちた表情で何度も感謝を述べる。「83歳になって清左衛門をまだ演じさせていただけるというのは本当に幸せなこと。その思いに応えられるように、これからも精進して一歩一歩前進していきたい」と幸せを噛み締める北大路は、「山下監督ともお父様(山下耕作監督)の代から何十年というお付き合いですが、今もこうして現場でともに汗を流せるのはこの上ない幸せです。これからもよろしくお願いします」と深々と頭を下げた。
最後に北大路が「これからも私たち現場の人間として、皆様の温かい応援をしっかりと受けて前進していきたいと思います」と締めくくり、3人が改めて「お誕生日おめでとうございます」と拍手を送る。登壇者全員の温かな人柄と、シリーズが紡いできた深い絆が会場全体を包み込む中、イベントは幕を閉じた。
取材・文=戸塚安友奈

