知人女性に危害を加えることをほのめかす発言をしたとして、山形県内に住む男性が脅迫と名誉毀損の疑いで逮捕された。報道によると、男性は警察署に「相談」に訪れた際、対応した警察官に対し、女性への殺意を口にしたという。
テレビユー山形によると、男性は1月31日、警察署で女性の名前を挙げたうえで、「もうとっくに限界は来ている。この状態が続くなら殺すかもしれない」と発言したとされる。
これを受けた警察官が、身の危険を知らせるため、女性に内容を伝えたところ、女性が恐怖を感じたため、脅迫罪が成立すると判断されたとみられる。
その後の捜査で、インターネット掲示板に女性を中傷する書き込みをしたとして、名誉毀損の疑いでも再逮捕された。
今回のケースで注目されるのは、本人が相手の女性に直接告げたわけではなく、警察官に相談した内容が女性に伝わった結果、脅迫とみなされた点だ。
はたして第三者を介した発言はどのような条件で「脅迫」となるのか。また、自ら相談に来た人物をその場で逮捕する必要性はあったのか。本間久雄弁護士に聞いた。
●「間接的に害悪の告知が届くと認識すれば成立する」
──第三者を介した発言はどのような条件で「脅迫」となるのでしょうか。
脅迫罪は、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する」と規定されています(刑法222条1項)。
この「害悪の告知」が、加害者から被害者本人に直接おこなわれる場合に限られるのかが、今回のケースのポイントとなります。
この点について、最高裁は「脅迫罪における害悪の告知は被害者に対し直接になす必要なく被告人において脅迫の意思を以て害悪を加うべきことを知らしめる手段を施し被害者が害悪を被るべきことを知つた事実があれば足りる」と述べて、間接的に被害者に害悪の告知が届くことを加害者が認識すれば脅迫罪が成立するとしています(昭和26年7月24日判決)。
同判決の事案も、今回と同様に、被告人が警察官に第三者への危害を通告したケースでした。
「被告人が中地区警察署に対し若い者三十名程つれてC小学校にフィルムを没収に行く旨を通告したことはその前後の関係から観察して警察署からB青年団側に告げられるであろうことは被告人が十分認識していたものであることを推測するに十分である」と判示し、脅迫罪の成立を認めています。
今回のケースの詳細な事情は報道からは明らかでないものの、男性が警察官を通じて被害者に発言内容が伝わると認識していた事情があれば、脅迫罪が成立する可能性はあります。
●逮捕する必要ある?条件は2つ
──自ら警察署に相談に来た人物をその場で逮捕する必要性はあったのでしょうか。
逮捕の要件は、
(1)罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
(2)逮捕の必要性
の二つです(刑事訴訟法199条)。
今回のケースの場合、(1)については、前述のとおり脅迫罪が成立する余地があります。
(2)の「逮捕の必要性」とは、具体的には、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれなどを指します。
たとえば男性が、知人女性に対して不利な証言をしないよう働きかけるおそれがあると判断される場合には、逮捕の必要性が認められる可能性があります。
【取材協力弁護士】
本間 久雄(ほんま・ひさお)弁護士
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。
事務所名:横浜関内法律事務所
事務所URL:https://jiinhoumu.com/

