「日本は医療イノベーションの恩恵を最大限に受けられる環境を再構築する機会がある」とリーガー社長は強調します。世界で急速に進む精密医療(個々の患者に最適化された治療)の時代に、日本が「取り残されてはならない」という強いメッセージが会見全体を通じて発信されました。
同社は今後5年間で20の新規モダリティ(新しい治療技術や手法)を世界市場に投入する計画を発表。日本では2025年に5製品を発売し、がんや免疫疾患などの領域で14の重要な治療法を導入。2028年には日本での事業が節目となる50周年を迎え、さらなる成長フェーズに入ります。
本稿では、リーガー社長が語った同社の事業戦略、注力する疾患領域、そして日本の薬価制度への具体的な提言について詳しくお伝えします。新薬開発の最前線で何が起きているのでしょうか、またそれが私たちの受ける医療にどのように影響するのでしょうか。

監修医師:
井上 祥(横浜市立大学共創イノベーションセンター特任准教授)
横浜市立大学共創イノベーションセンター特任准教授、医師・医学博士。株式会社GENOVA取締役執行役員 事業推進室室長、大阪大学招へい准教授、京都大学客員研究員、東京科学大学非常勤講師、日本チェス連盟アンチドーピング・チーティング委員、日本医学会総会2027広報アドバイザー、日本医療機能評価機構EBM普及推進事業運営委員、日本デジタル医学会理事。専門は医療・健康情報学、医療コミュニケーション、医学教育。
新社長の経歴と日本への思い
20年以上のグローバルキャリア
リーガー社長は、20年以上前にアメリカでMR(医薬情報担当者)としてジョンソン・エンド・ジョンソンでのキャリアをスタートしました。「今日、私たちのチーム一人ひとりがそうしているように、私は現場でお客様に奉仕することでこのビジネスを学びました。」と、自らの原点を振り返ります。
その後、マーケティングや商業部門でキャリアを積み、中国やシンガポールなどアジア市場での経験を重ねました。こうした経歴を通じて「異なる医療制度、異なる政策、異なる文化の中で、各国がどのように健康に投資し、イノベーションを人々に届けているかを学びました」と語ります。
日本との出会いと現職就任
2021年から日本で医療機器部門を担うメディカル・カンパニーの外科事業を統括。「ここで日本のユニークで素晴らしい文化、そして医療制度とそのメリットを知りました」とリーガー社長は述べます。
2025年6月、イノベイティブ・メディスン部門の代表取締役社長に就任。「アメリカとアジア市場、医薬品と医療機器のそれぞれにまたがるキャリアで培った幅広い経験とグローバルな視点を、日本の医療環境の発展に生かしたい」と抱負を語りました。
事業変革の全体像
50年の歴史と新たな革新サイクル
ジョンソン・エンド・ジョンソン イノベイティブ・メディスンは、2028年に日本での事業50周年を迎えます。「約15年前に市場に投入した製品を中心にビジネスを構築し、その後しばらくイノベーションの停滞期がありました」とリーガー社長は率直に認めます。しかし現在、同社は新たなイノベーションサイクルに入ったといいます。「特に治療が困難な領域において、新しい手法の導入を通じて新たな成功のサイクルに突入しています」と宣言しました。
ポートフォリオの劇的な変革
同社は事業の軸を、中枢神経系や皮膚疾患などの領域に強みを持った従来の製品群から、オンコロジー(がん領域)とイミュノロジー(免疫領域)へと大きくシフトしています。「2025年には五つの製品を発売し、重要な疾患に対して合計14の意義ある臨床レジメン(治療計画)を導入しました」とリーガー社長は説明します。
このイノベーションサイクルは2026年以降も継続する見込みです。「私たちは将来に興奮しています。フォーカスに興奮しています。そして事業の方向性に興奮しています」と、繰り返し「興奮」という言葉を使って意気込みを示しました。

