高齢化が進むにつれて、今後は訪問診療(在宅医療)を希望する患者数はますます増えることが予想されます。今回は、訪問診療をおこなう際の心構えについて、「久光クリニック」の石田先生に解説していただきました。

監修医師:
石田 隆雄(久光クリニック)
鳥取大学医学部医学科卒業。その後、草津総合病院(現・淡海医療センター)、国立国際医療研究センター病院で経験を積む。2014年、東京都足立区に位置する「久光クリニック」の院長に就任。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。
編集部
訪問診療を開始するにあたり、どんなことに注意すればいいでしょうか?
石田先生
まずご家族にとっては、頑張りすぎないことが大切です。在宅医療が始まると、どうしてもご家族の看護や介護の負担が大きくなり、誰か1人に負担が大きくのしかかることも少なくありません。しかし、1人で抱え込まず、周囲と協力できる体制を作って、できるだけみんなで患者さんを支えることが大切です。
編集部
ほかに気をつけたいことは?
石田先生
自宅での療養生活を支えるには、家族も患者もある程度、医療に関する知識や理解が必要になります。もし看護や介護をする上でわからないことがあれば、医師や看護師に相談するなど、いざというときの相談ルートを明確にしておくといいかもしれません。
編集部
そのほかには?
石田先生
医療のことだけでなく、生活や経済的なことなどで不安があれば介護・福祉のスタッフや自治体など、まわりの人に相談するなどして、周囲の助けを借りることも大切です。
編集部
患者本人だけでなく、家族も心構えが必要ですね。
石田先生
そうです。それから大事なのは、いざ具合が悪くなったとき、どういう風にすればいいのかをイメージしておくことです。すぐに救急搬送をおこなうのか、それとも可能な限り在宅医療を継続するのか、あるいは絶対に在宅医療を続けたいのかなど、ご家族で話し合っておくと、緊急時の対応に困らなくて済むと思います。
編集部
そういう話し合いをする際には、患者の意志を優先すべきでしょうか?
石田先生
もちろん、患者本人の意志は重要ですが、家族がその希望を叶えられるのかということも重要です。患者と家族、どちらの意見も取り入れながらうまく折り合いをつけることで、双方にとって満足のいく在宅医療につながります。平時のうちからそうしたことを話し合い、いざというときのイメージを持っておくといいでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
石田先生
現在、高齢化が進むにつれて、訪問診療を希望する人は非常に多くなっています。しかし実際は、具合が悪くなってから導入するケースが少なくありません。そうなると訪問診療を開始するハードルが高くなったり、ご自宅でできることに制限が生じたりすることもあります。具合が悪くなる前に訪問診療を開始していれば、先手を打ってケアすることができるので、ぜひ相談しやすい医療機関を探して、気軽に話を聞いてみることをおすすめします。
※この記事はMedical DOCにて<「訪問診療」の事前準備で必要なことはご存じですか? 患者・家族の心構えも医師が解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

