
映画好きで知られるお笑い芸人の加藤浩次と映画ライターのよしひろまさみちが、おすすめの作品を深掘りする「加藤浩次とよしひろのサタデーシネマ」(土曜朝8:00-11:00、BS10)。2月21日の放送では、世界最高峰の難易度を誇る“K2”を舞台にした山岳アクションの金字塔「バーティカル・リミット」をピックアップする。命がけのミッションに挑む手に汗握る展開と、作品が投げかける重いテーマについて熱い議論が交わされた。
■最大1000人のクルーが登頂して挑んだ「本物の山」の緊張感
作品を観終えた加藤は、冬の山に液体爆弾のニトロを持っていくというぶっ飛んだストーリーに「普通だったらありえない」と率直にコメント。本作には本物の登山家がアシスタントとして参加していたにもかかわらず、この演出が採用されたことを否定的に捉えていたようだ。とはいえ加藤は「エンターテインメントに昇華しようってことだよね」と、“映画としてのケレン味”であることに理解を示した。
そんな本作の最大の魅力は、圧倒的なリアリティーを誇る登山シーンだ。特に断崖絶壁を登る冒頭のシーンは加藤の目にも焼き付いたようす。それもそのはず、撮影はニュージーランドの標高2000m超の山でおこなわれ、危険なシーン以外は実際に山に登って撮影されている。
キャストは事前に屋内施設で1カ月の訓練を受け、撮影期間中はスタッフや装備とともに毎日ヘリコプターで山へ運ばれるという過酷な環境。雲の動きを察知しながら自然と対峙し、最終的には最大1000人のプロダクションとクルーが山頂に登って撮影に関わったという。
この途方もないスケールに加藤は驚きつつ、「実際に撮ってるとやっぱり違うな」とCGや合成にはない実写の迫力を噛み締めていた。よしひろは映像技術が進化した現代では背景を容易に作れるなか、「どんなに上手い役者さんだったとしても、本物の山に連れて行かれるのとグリーンバックでの撮影では変わると思う」と考察。加藤も現場を知る表現者として「緊張感が違いますよね」と深く共感していた。
番組後半、2人の議論が特に白熱したのは「命の選択」という究極のテーマについて。仲間を救うために自らを差し出す自己犠牲よりも、仲間を犠牲にして生き残った後の人生のほうが辛いのではないかと加藤は考察する。さらに「“みんなで死のうぜ”っていうパターンもある。でも、父親として考えると“子どもたちだけは生きろ”っていう考えもある」と、親としての視点も交えて複雑な心境を吐露。
よしひろも「生き残ったほうが一生背負い続けることになる。キツいだろうな」と、生存者が抱える葛藤に思いを馳せる。災害現場での“トリアージ”という概念が浸透した現代において、加藤は「この選択をしている人はすごいと思う」と極限状態で決断を下す人々へ敬意を表した。
25年以上前の作品でありながら、今なお色褪せない迫力を持つ本作。加藤が指摘した「ニトロ」の設定は確かにリアリティに欠けるかもしれないが、それを補って余りあるのが「本物の山」が放つ質感だ。1000人のスタッフが実際に山に登ったという事実は、映像に説得力以上の重みを与えている。
また加藤が深く切り込んだ“生き残った側の地獄”という視点も、同作を「現代的なエンターテイメント」「映像を楽しめるアクション映画」という枠を超えて楽しむスパイス。映画好きの2人による考察によって、より多層的な人間ドラマとして再定義してくれた。
■「バーティカル・リミット」ストーリー
ピーターは、K2のベースキャンプで妹のアニーと3年ぶりに再会。登山一家に育った2人は、父親を亡くしたロック・クライミング中の事故を巡り確執が深まり、以来疎遠になっていたのだ。ピーターはその後写真家となったが、アニーは父親の遺志を継いで登山家となり、父親の悲願であったK2登頂に挑もうとしていた。しかし間もなく、アニーが雪崩に遭って氷のクレバスに閉じ込められる事故が発生したとの報せが入る…。

