私は自分のカギで、静かにドアを開けました。
玄関には、見なれない女のクツがそろえられています。リビングからは、たのしそうな笑い声が聞こえてきます。
「……失礼します」
私がとびらを開けると、そこには、上半身ハダカでくつろぐ大和と、私のエプロンを借りて、キッチンに立つ「高橋美咲」の姿がありました。
「は……由奈!? は?なんで、え、今日帰って……えっ、え、親父!? お袋まで!?」
大和は飛び起き、あわてて服をつかみました。
「え、な、なに、え?」
美咲はおどろきで固まり、手に持っていたオタマをカランと落としました。
地獄の制裁の始まり…
大胆にも、自宅でくつろぐ夫と不倫相手…。そこへ突然、妻と両親、そして妻の親友があらわれたら…。もう言い逃れできません。
妻が提示した数々の証拠
そこには、2人が家に出入りするカメラの映像と、昨夜の生々しい会話の録音データが並んでいます。
「不貞行為の証拠です。大和の会社にも、この事実を報告します。もちろん、美咲さんには、慰謝料を請求しますし、大和には離婚と養育費、そして、この家からの即刻退去を求めます」
「由奈! 待ってくれ、これはちがうんだ! 彼女が勝手に……!」
「はあ?」
美咲は顔をしかめ、大和の顔を凝視しました。大和は、美咲の視線を押し除けるように義父の前にヒザをつき、泣きながら謝罪を始めました。
「父さん、ごめ…おれ…ちがう、本気じゃない」
しかし、義父はその肩を強く突き放しました。
「大和、お前、一度ならず、二度も…!由奈さんとミナをうら切って、あろうことか自宅に連れ込むとは……!親子の縁を切る覚悟はできているんだろうな!」
義母も冷たい視線を向けます。
「大和、もういいわ。あなたの言い訳は。由奈さん、あとの手続きは弁護士さんに任せましょう」
美咲は自分の立場がわるくなったことを悟ったのか、急によわよわしく泣きマネを始めましたが、千絵がそれを一喝しました。
「手紙まで送って挑発しておいて、今さら被害者ヅラ? 厚かましいにも程があるわよ!」
不倫相手の女は以前、由奈に対して「彼をゆずって」という主旨の手紙を送りつけていたのです。由奈は、「ゴミの処分に困っていた、のしを付けて差し上げたい」と告げ、不貞の証拠を次々と突きつけます。
今さら土下座しても遅いですね。夫も不倫相手の女も、すべてを失います。

