「しゅん、これ、どうしたの?」
私は探るように尋ねた。しゅんは、真顔で平然と答えた。
「うん! じいじがね、運動会のご褒美にね、買ってくれたの!」
しゅんの言葉に、私の心臓はさらに強く跳ねた。運動会? そんなこと、一度も聞いたことがない。それに、運動会はもう3か月ほど前…。そのキーホルダーが、なぜ今になって突然出てくるのか。
「じゃあ、そのスーパーに行けば、同じのがあるんだね?」
私は、しゅんの嘘を暴こうと、さらに畳みかけるように言った。しかし、しゅんは一瞬ためらったものの、すぐにまた作り笑いを浮かべた。
「うーん…もう、ないと思う…」
その言葉に、私の疑念は確信に変わった。しゅんは、嘘をついている。このキーホルダーは、間違いなくさっきの100円ショップで、しゅんが手にしていたものだ。私の胸は、言いようのない不安と悲しさでいっぱいになった。
なぜか、家にあった例のキーホルダー
買い物に行った際、啓子は子どもたちに1つだけ好きなものを買っていいよと話します。すると、しゅんは妹に「キーホルダーにしたら?」と渡します。ですが、妹・ひなは、お菓子が欲しいため、キーホルダーを断ります。啓子はしゅんに、キーホルダーを売り場に戻すよう伝えました。
ところが、家に帰るとしゅんが「家にキーホルダーがあった」と、笑顔で報告しにきたのです。ですが啓子は、じいじが買ってくれたという話、聞いていません。違和感を覚え、息子を問い詰めます…。
息子のしてしまった過ち
「しゅん。もし、防犯カメラに、しゅんがそのキーホルダーを持ってるのが映ってたら、どうする?」私は、あえて少し厳しい口調で、しゅんに問いかけた。しゅんの顔から、みるみるうちに血の気が引いていくのが分かった。そして、次の瞬間、しゅんはポロポロと涙をこぼし始めた。
「ごめんなさい…ごめんなさい、ママ…」しゅんは、小さな声でそう言って、私の胸に顔を埋めた。その震える小さな肩を抱きしめながら、私は静かにしゅんの言葉を待った。
「あのね…ひなが、いらないって言ったから…違う商品に変えようと思って…急いで、洋服の内側に入れたの…」しゅんは、嗚咽混じりに、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「ママは…買ってくれないと思ったから…」その一言が、私の心を深くえぐった。私が、しゅんにそう思わせてしまったのだろうか。私が、日頃から厳しすぎたのだろうか。頭の中を、さまざまな後悔が駆け巡った。
そして、翌日。私はしゅんを連れて、昨日訪れた100円ショップへ謝罪に行った。店員さんは、私たちの話を聞いて、幸いにも警察を呼ばずに済ませてくれた。ただ、二度とこのようなことがないよう、厳重に注意された。
しゅんは、キーホルダーを戻さず、自分の洋服に入れてしまったようです。母・啓子に問い詰められ、とうとう白状しました。
そして翌日、お店へ謝罪をしに行きます。大ごとにならず、ホッとしました。

