
愛するパートナーが、ある日突然「おばあさん」になってしまったら、あなたはどう向き合うだろうか。近所の主婦たちからは「気味悪い」「奥さんを見たら驚くわよ」と好奇の目にさらされる日々。
夫は変わらず妻を大切にしているが、変わり果てたしわくちゃの顔をどうしても直視できず、妻の見ていないところで「俺は…老いが恐ろしい」と声を殺して嗚咽(おえつ)を漏らしていた――。
今回は、理不尽な「老い」に直面した夫婦の愛と葛藤を描いた、漫画家・墨染清さん(@sumizomesei)の『としとしあわせ』を紹介する。




■突然“老婆”になった30歳の妻
誰からも愛される笑顔が似合う女性だった、妻のひまわり。しかし、結婚10周年を迎え、夫婦そろって30歳になった矢先、彼女はまるで老婆のような姿に変わり果ててしまう。
急激に老け込んだ妻に対し、世間の反応は冷酷なものだった。夫はそんな周囲の声を気にせず、献身的に妻を支えようとする。しかし、愛しているからこそ、その劇的な変化を受け止めきれず、心の奥底で激しい恐怖と悲しみに苛(さいな)まれていた。綺麗事だけではない、人間の生々しい葛藤がそこには描かれている。
■大切な人が老いていく苦痛
本作には読者から「涙腺が崩壊した」「残酷だけど美しすぎる」といった絶賛の声が相次いでいる。
作者の墨染さんは、この反響についてこう語る。
「自分が老いることよりも、大事な人が老いて弱る姿を見るほうがよほどつらいと昔から感じていました。その苦痛を当時の私なりに精いっぱい詰め込んだ作品です」
タイトルの『としとしあわせ』には、「歳」と「幸せ」、そして夫婦が手を取り合う「歳歳合わせ」という意味が込められているという。無情に訪れる老いの中で、二人がどう幸福を見つけるか。その答えがこのタイトルに隠されている。
■賛否両論? 結末は読者の胸の内に
物語の結末については、読者の間で意見が真っ二つに分かれている。「最高のハッピーエンド」と涙する人がいる一方で、「胃が圧殺されるような思いだ」「どう解釈していいかわからない」と頭を抱える人も続出した。
墨染さんは「ラストを曖昧に描きすぎたために読者を困らせてしまいましたが、それぞれの解釈を聞かせてもらえてうれしかった」と振り返る。最後の数ページに描かれているのは、神が与えた奇跡なのか、それともはかない胡蝶の夢なのか。その真実は、読者それぞれの胸の内に委ねられている。
取材協力:墨染清(@sumizomesei)
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