介護が必要になったとき、介護保険を使えるのかどうか、誰が申請できるのかわからず戸惑う方は少なくありません。介護保険は、高齢の方だけでなく、一定の条件を満たせば40歳から64歳の方も対象となる制度です。ただし、年齢や病気の種類によって利用できるかどうかが決められており、仕組みを正しく理解していないと申請のタイミングを逃してしまうこともあります。また、申請は本人だけでなく、家族や周囲の支援者が行える場合もあり、手続きの流れや相談先を知っておくことが大切です。
本記事では、介護保険を申請できる方の条件や対象となる年齢・病気、申請を行える方の範囲、実際の申請から利用開始までの流れを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
介護保険を申請できる人

介護保険は、年齢や病気の条件によって利用できるかどうかが決められています。高齢の方が対象という印象を持たれがちですが、実際には40歳から64歳の方でも、一定の病気が原因で介護が必要になった場合には申請できます。
第1号被保険者(65歳以上)で要介護(要支援)状態の方
65歳以上の方は、第1号被保険者として介護保険の対象になります。この区分では、病気やけがの原因は問われず、日常生活に支援や介護が必要と判断されれば、介護保険の申請が可能です。加齢に伴う筋力の低下や関節の不調、認知機能の低下などにより、入浴や排せつ、食事、移動といった動作が一人で行いにくくなった場合に要介護認定の対象になります。
要介護認定は、介護がどの程度必要かに応じて、要支援1・2、要介護1から5までの区分が設けられています。要支援は、生活の一部に手助けが必要な状態を指し、要介護は、継続的な介護が必要な状態と整理されています。認定結果によって、利用できる介護サービスの内容や量が変わるため、生活のなかで困っていることを整理して申請につなげることが重要です。
第2号被保険者(40~64歳)で特定疾病が原因で要介護(要支援)状態になった方
40歳から64歳の方は、第2号被保険者として位置付けられています。この年齢層は、すべての病気が対象になるわけではなく、国が定めた特定疾病が原因で介護が必要になった場合に限り、介護保険を申請できます。特定疾病とは、加齢に伴って起こりやすく、長期的な支援や介護が必要になりやすい病気です。
具体的には、初老期の認知症や脳血管疾患、関節リウマチ、末期のがん、筋萎縮性側索硬化症などが含まれ、全部で16種類が定められています(表)。
表:特定疾病(全16種類)
がん
(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
【パーキンソン病関連疾患】
関節リウマチ 早老症
筋萎縮性側索硬化症 多系統萎縮症
後縦靱帯骨化症 脊柱管狭窄症
骨折を伴う骨粗鬆症 脳血管疾患
初老期における認知症 閉塞性動脈硬化症
脊髄小脳変性症 慢性閉塞性肺疾患
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
これらの病気により、日常生活を一人で送ることが難しくなった場合、年齢が65歳未満であっても要介護認定の申請が可能です。
介護保険の申請手続きを行える人

介護保険の申請は、介護が必要になった本人だけが行うものと思われがちですが、実際には複数の立場の方が手続きを行えます。体調や認知機能の状態によっては、本人が申請書を準備したり、窓口へ出向いたりすることが難しい場合もあります。そのようなときでも申請が滞らないよう、制度上は代行申請が認められています。
本人
介護保険の申請は、原則として介護が必要な本人が行えます。市区町村の窓口や地域包括支援センターで申請書を受け取り、必要事項を記入して提出します。申請時には、介護保険被保険者証や本人確認書類、主治医の医療機関名などを求められる場合があります。身体の状態が安定しており、書類の記入や手続きが可能な場合には、本人による申請が基本です。
ただし、介護が必要になる状況では、外出や書類作成そのものが負担になることもあります。申請は一度きりで終わるものではなく、その後の認定調査や結果通知、サービス利用へと続くため、無理のない方法を選ぶことが重要です。本人が申請する場合でも、事前に家族や支援者と流れを共有しておくと、手続きが進めやすくなります。
家族や親族
介護保険の申請は、家族や親族が本人に代わって行うことが可能です。配偶者や子、同居していない親族であっても、日常的に支援を行っている場合には申請できます。高齢の方や認知機能の低下がみられる方は、家族が中心となって申請を進めるケースが多い傾向があります。
家族が申請する場合も、本人の状態や生活のなかで困っていることを具体的に整理しておくことが大切です。要介護認定は、日常生活動作や介助の必要性が細かく確認されるため、普段の様子を把握している家族の関わりは欠かせません。申請時点から家族が関与することで、その後のケアプラン作成やサービス選択もスムーズにつながります。
地域包括支援センターの職員など
本人や家族での申請が難しい場合には、地域包括支援センターの職員や市区町村の担当者が申請を支援する仕組みがあります。地域包括支援センターは、高齢の方の暮らしや介護に関する総合的な相談窓口として設置されており、介護保険の申請手続きについても相談できます。
職員が申請を支援する場合には、本人や家族の同意を得たうえで、書類作成や提出の手続きを進めます。介護の状況が複雑な場合や、相談先がわからない場合でも、地域包括支援センターに連絡することで、適切な窓口につながります。

