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子どもを育てられない幼い母親たち。その背景にある孤独と過酷な現実を見つめて【著者インタビュー】

子どもを育てられない幼い母親たち。その背景にある孤独と過酷な現実を見つめて【著者インタビュー】

思い出すのは「人と人との距離が近く、地域全体で子育てをしている風景」


『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より
『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より / (C)きむら かずよ/KADOKAWA

――この作品を描くにあたって、編集さんと一緒に、きむらさんご自身の生い立ちを掘り下げたそうですね。

そうなんです。主人公のカヨコが生まれ育った街は、私が子どもの頃に一時的に暮らしていた街がモデルになっています。今ではすっかり近代的に変わり、当時の面影はほとんど残っていませんが、私が住んでいた頃は、まだ発展途上といった雰囲気の街でした。

そこには本当にさまざまな人生、さまざまな背景を持つ個性豊かな家族が暮らしていて、人と人との距離がとても近かったんです。よその子どもも自分の子どもと同じように見守り、地域全体で子育てをしている、そんな空気が自然とありました。母は後になって、「あの街は、母親にとってとても子育てしやすい場所だった。地域のみんなが母親に優しかった」と話してくれました。

『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より
『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より / (C)きむら かずよ/KADOKAWA

私には、怖い大人ばっかりだったというイメージしかありませんでした。ただ、今振り返ると、あちこちの家を行き来しながら、いろいろな家庭のあり方を目にし、お金に余裕のある大人もいれば、今日を生きることで精一杯な大人もいる。そんな多様な背景に触れられたことは、かけがえのない経験だったと思います。

現代では、隣にどんな人が住んでいるのかさえ分からない環境で子育てをしている方も多いですよね。そうした地域で暮らしていると、カヨコのように世話焼きで踏み込んでくる存在は、理解しづらく感じられるかもしれません。だからこそ、民生委員であるカヨコをリアルに描くためには、彼女がどんな場所で育ち、どんな価値観を身につけてきたのか、その背景を丁寧に作り込む必要がありました。自分自身の記憶にある街のエピソードを重ねたのは、そのためなんです。


主人公の小学生時代と現在を行き来する物語


『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より
『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より / (C)きむら かずよ/KADOKAWA

――カヨコの小学生時代と現在が交差するような形で進んでいく構成に引き込まれました。

きむらかずよさん:この構成は、編集さんからいただいた提案がきっかけでした。人は誰でも、それぞれにこれまで生きてきた時間や環境があり、その積み重ねが今の自分を形づくっています。過去と現在は切り離せるものではなく、複雑に絡み合いながら続いているもの。カヨコの小学生時代と現在を行き来する形にすることで、彼女がどんな経験を重ね、どんな思いを抱えながら今を生きているのかを、より立体的に描き、物語にいっそうの深みを生み出したいと考えました。

――きむらさんが、特に気に入っているシーンを教えてください。

きむらかずよさん:やはり、カヨコとナルミの子ども時代を描いたシーンですね。当時暮らしていた、あの街の空気を思い出しながら描く作業そのものが、楽しかったです。社会のルールを守らなかったり、いたずらをしたりすると、容赦なく叱る大人たちは本当に怖かったです。でもその分、ひとりひとりがとても個性的で、人間味にあふれていました。今のようにおしゃれなものや便利なものが揃っていたわけではありませんが、不思議と、とても豊かで温かい場所だったと感じています。
『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より
『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』より / (C)きむら かずよ/KADOKAWA

子どもたちも、それぞれに複雑な家庭の背景を抱えながら、それでもたくましく、驚くほど明るく生きていました。そんな記憶を懐かしく思い出しながら、自分自身も癒やされるような気持ちで描いていたシーンです。

* * *

子育てを「家庭の中だけのこと」にしないために、周囲の大人ができることは何か。物語を読み終えたあと、少しだけ視野が広がり、身近な人に目を向けたくなる。『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』は、そんなきっかけを与えてくれる作品です。


取材・文=宇都宮薫
配信元: レタスクラブ

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