「トイレが近くなった」「夜中にトイレで何度も起きる」「排尿後もスッキリしない」「尿の勢いが弱くなった」──。こうしたトラブルを年齢のせいと感じていませんか? 実は、加齢以外にも原因が潜んでいる場合があります。今回は、かとう泌尿器科・内科クリニックの加藤隆先生に、排尿の悩みを放置すべきでない理由と、受診の目安について伺いました。
※2025年11月取材。
≫【1分動画でわかる】『前立腺肥大症』4つの症状
監修医師:
加藤 隆(かとう泌尿器科・内科クリニック)
2011年藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)医学部卒業。社会保険中京病院(現・JCHO中京病院)での初期研修後、同院泌尿器科、名古屋第一赤十字病院(現・日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院)泌尿器科に勤務。2024年より加藤医院を経て現職。日本泌尿器科学会 専門医・指導医、泌尿器内視鏡手術 技術認定医、泌尿器ロボット支援手術 認定医。
トイレの悩み、その原因は?
編集部
尿の出が悪い、残尿感があるなどの症状は、やはり年齢のせいなのでしょうか?
加藤先生
確かに、加齢とともに排尿トラブルは増えますが、すべてが“年のせい”とはいえません。多くの男性にみられる「前立腺肥大症」をはじめ、膀胱(ぼうこう)や神経の異常、薬の副作用など、さまざまな原因が関係していることがあるため注意が必要です。
編集部
排尿トラブルがある場合、どのような病気が考えられるのですか?
加藤先生
最も多いのは、先ほど挙げた前立腺肥大症です。前立腺が大きくなることで尿道を圧迫し、尿の流れを妨げます。そのほかにも、前立腺炎や神経因性膀胱、糖尿病による神経障害なども原因となります。
編集部
前立腺肥大症とはどのような病気ですか?
加藤先生
前立腺肥大症は、加齢により前立腺が大きくなり、尿道を圧迫することで排尿障害が起こる病気です。50歳頃から増え始め、60代では2人に1人が発症します。尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる、排尿後も残った感じがする、夜間にトイレへ行く回数が増えたなどが特徴で、年齢とともにこうした症状がより顕著になります。
編集部
前立腺がんとは違うのでしょうか?
加藤先生
前立腺肥大症は良性の病気であり、前立腺がんとは異なります。ただし、両者が併発することもあるため、PSA検査(前立腺がんを発見するためにおこなう血液検査)を受けておくと安心です。よく「前立腺肥大症があると前立腺がんになる可能性も上がるのですか?」と質問を受けますが、肥大症そのものが前立腺がんの発症リスクを高めるわけではありません。
検査と治療の進め方を医師が解説!
編集部
前立腺肥大症を放置するとどうなりますか?
加藤先生
尿が出にくい状態が続くと、進行に伴い排尿筋が筋線維化し、硬くなって修復力が低下します。その結果、膀胱が疲弊して尿をうまく排出できなくなり、「尿閉」を起こすことがあります。さらに、尿が腎臓へ逆流して腎機能の低下や腎盂腎炎(じんうじんえん)を引き起こす危険もあります。こうした合併症を防ぐためには、症状が進行する前に検査と治療を開始することが重要です。
編集部
病院ではどのような検査をおこなうのでしょうか?
加藤先生
問診で症状を聞き、尿検査や超音波検査で前立腺の大きさや残尿の有無を調べます。また、専用のトイレで排尿の勢いを測る検査をしたり、血液検査でPSA値を測定して前立腺がんがないかの確認をしたりもします。痛みを伴わず、短時間で済む検査がほとんどです。
編集部
前立腺肥大症はどのように治療しますか?
加藤先生
軽度の場合は薬での治療が中心です。尿道を広げる薬や前立腺を縮小させる薬を使います。薬で改善しない場合や副作用で服薬の継続が困難な場合は、手術を検討します。近年は、体への負担が少ない手術法も増えています。
編集部
体への負担が少ない手術とはどんな方法ですか?
加藤先生
一つ例を挙げるとすれば、経尿道的水蒸気治療(WAVE治療)という手術があります。WAVE治療は、前立腺組織に水蒸気を注入して内部の細胞を壊し、縮小させる新しい治療法です。出血や痛みが少なく短時間で終わるのが特徴で、メスを使わずに治療できるため、仕事や日常生活への復帰が早いところも利点です。入院を必要としないケースも多く、前立腺肥大症治療の選択肢の一つとして注目されています。
編集部
WAVE治療はどんな人に向いていますか?
加藤先生
薬で効果が乏しい人、あるいは手術には抵抗がある人、仕事などで入院が難しい人に向いています。また、持病などの影響で大きな手術や麻酔が難しい場合にも適しています。ただし、すべての前立腺肥大症患者におこなえるわけではなく、前立腺の大きさや症状によって適応を判断します。

