小腸がんを発症する確率
小腸がんの発症確率(罹患率)は他の主要ながんと比べて非常に低いものです。日本人が小腸がんになる確率は、生涯で見ても1%未満と推定されています。統計データで見ると、人口10万人あたりの年間小腸がん発症数は、男性で2.61人、女性で1.77人程度という推計値があります。この数字は大腸がん(同じ消化器のがんで日本人に年間100人以上/10万人が発症)などと比べても極めて少なく、小腸がんが稀ながんであることを示しています。全がんの中での割合も前述したとおり0.5%以下で、例えば大腸がんの約1/100程度の頻度しかありません。言い換えれば、一般の人が小腸がんになる確率はごくわずかです。しかし、上述した特定のリスク因子をお持ちの方では発症確率が高くなるため注意が必要です。
小腸がんの発症が少ない原因
小腸がんが少ない理由として、以下のことが挙げられます。
胃や大腸に比べ外部からの刺激が少ない
小腸は口から入ってくる食べ物や菌に直接触れることが少ない臓器です。食べ物はまず口腔・食道・胃を通り、その過程である程度殺菌・消化されます。胃の先の十二指腸以降に達する段階では、食塊はドロドロの消化液混じりの状態になっており、口から入った細菌やウイルスなどの多くは胃酸で死滅しています。そのため小腸は口腔・咽頭、食道、胃などに比べて有害な刺激を直接受けにくい環境です。こうした理由から、小腸はそもそも外からの刺激によって細胞ががん化するリスクが低いと考えられています。
腸内細菌の数が少ない
腸内細菌の少なさも小腸がん発生が少ない一因とされています。人間の消化管では大腸に非常に多くの細菌が生息していますが、小腸内の細菌数はそれに比べると格段に少ないのです。大腸の細菌は食物中の成分を分解する過程で発がん物質を産生することが知られています。一方、小腸は大腸ほど細菌が多くなく、内容物も滞留せずに先へと送られていくため、発がん物質が長時間留まることがありません。このような小腸の環境が、がんの発生を抑えていると考えられます。
粘膜細胞の新陳代謝が盛ん
小腸は粘膜の新陳代謝(生まれ変わり)が活発な臓器です。絶えず栄養を吸収している小腸粘膜の細胞は盛んに分裂・再生を繰り返しており、古くなった細胞やダメージを受けた細胞はどんどん剥がれ落ちて新しい細胞に置き換わっています。胃も粘膜のターンオーバーが速い臓器ですが、小腸はさらに活発です。このように粘膜細胞の新陳代謝が盛んであるため、腫瘍が形成されても腸管から排出されてしまう可能性があります。

