ぶじに出産を終え、家族として暮らしてきた、真里と祐介。しかし、祐介はやはり浮気グセをやめられなかったようで、検索履歴には、何やら不穏な文字がうかんでいたのです。
再び、働いた「女のカン」
娘が生まれ、育児に追われる中で、私はかつての絶望を、心の奥底に封印しようと必死に努めていました。
夜泣きや離乳食の進み具合に、一喜一憂する毎日。
祐介は子煩悩な父親を演じ、約束どおりに位置情報の共有も続けていました。休日に公園へ行けば、娘をだっこして笑う彼の姿は、「理想のパパ」そのものでした。
しかし、娘が生後半年を迎えたころ、またしてもあの、「不吉な予感」が私の心を吹き抜けていったのです。
祐介の帰宅が徐々におそくなり、私を見る目が、どこか泳いでいるような気がしたのです。
夕食を食べている時、ふと目が合うと、彼は不自然に視線をそらし、饒舌に職場の話を始めます。それは、彼が何かをかくしている時のクセでした。
また、スマートフォンの通知が届くたび、彼の肩が跳ね上がる様子に、私は直感しました。
(また、やっている)
深夜、彼が寝静まった後、スマートフォンを確認すると、メッセージアプリの中身は、おどろくほど清潔でした。以前のような友人との下劣なやり取りも、あやしい女性との履歴も、何一つ残っていません。
「検索履歴」に愕然…
まるで、私にチェックされることを想定し、毎日、丁寧にゴミ掃除しているかのような「きれいさ」でした。
しかし、その過剰なまでの潔癖感こそが、「何かを隠滅している」という、動かぬ証拠に思えました。普通の生活をしていれば、もっと雑多な履歴が残るはずなのです。
私は、ブラウザの閲覧履歴に目を向けました。すると、そこには、まるで犯罪者の足跡のように、彼の企てを証明するような検索ワードが並んでいたのです。
「位置情報のごまかし方」「iPhone GPS 偽装 アプリ」「他人にスマホをあずけて位置情報を偽装する方法」
さらには、「飲み屋街の中にまぎれている風俗」「看板のない店舗型」「シャワー完備のネットカフェ」といった、特定の目的を隠ぺいするためのキーワードが並んでいました。
血の気が引くのと同時に、今度はもうれつな怒りがわき上がってきました。
彼は、反省などしていませんでした。ただ、「バレないようにする方法」を学んだだけだったのです。私の信頼をうらぎるだけでなく、私との「位置情報共有」という最後の絆さえも、あざ笑うかのようなその執念に、心底、愛想が尽きました。
彼は、私との信頼をふみにじることに、快感を覚えているのではないかとさえ思えました。

