「性行為後に腹痛」を感じる原因はご存知ですか?【医師解説】

「性行為後に腹痛」を感じる原因はご存知ですか?【医師解説】

性行為後に腹痛がある時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?メディカルドック監修医が解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

※この記事はメディカルドックにて『「性行為後に腹痛」を感じる原因はご存知ですか?対処法も医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

阿部 一也

監修医師:
阿部 一也(医師)

医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

「性行為後に腹痛がある」原因と対処法

女性の場合、お腹には、子宮や卵巣といった女性生殖器があります。また、男女ともに、胃や小腸、大腸などの消化器、腎臓や尿管、膀胱などの泌尿器がお腹にはあります。そのため、腹痛の原因には、多くの原因があります。
今回は、性行為後に腹痛がある場合の原因や対処法について解説します。

性行為後に腹痛がある原因と対処法

女性の7割程度の方が、生涯に少なくとも1度、性行為中あるいは性行為後に下腹部の痛みを感じるといわれています。多くの場合は筋肉痛などの一時的なもので、心配のいらないことが多いです。しかし、痛みが3ヶ月後以上続く場合には治療が必要なケースがあります。
例えば、婦人科の病気としては、性感染症、卵巣腫瘍、卵巣嚢胞、子宮筋腫、子宮内膜症、排卵に伴う痛みなどがあがります。
また、泌尿器科の病気として、細菌性膀胱炎などの尿路感染症や間質性膀胱炎、膀胱結石、腎臓結石なども性行為後の痛みの原因となることがあります。
その他、胃腸炎などの消化器系の原因によって腹痛が生じることもあります。
自宅での痛みの対処法としては、安静にし、温かいタオルなどで患部を温めること、さらに鎮痛薬を内服するといったことがあります。
痛みが続く場合には、婦人科または泌尿器科、消化器内科を受診し、症状を詳しく伝えるようにしましょう。

性行為後にお腹の左側に腹痛がある原因と対処法

性行為の後にお腹の左側に腹痛がある場合には、婦人科系の疾患では、骨盤内感染症(PID)や、子宮外妊娠、卵巣嚢胞の破裂、卵巣出血などが考えられます。また、子宮内膜症という、子宮外で子宮の内膜と同じ組織が増えてしまう病気があります。その組織が作る嚢胞(子宮内膜症性嚢胞、チョコレート嚢胞と呼ばれることもあります)が破裂することでもお腹の左側に腹痛が生じることがあります。
また、お腹の左側には、胃や脾臓、膵臓、左腎臓、大腸などがあります。そのため、左下腹部に起こる痛みは、大腸憩室炎などの可能性もあります。
痛みが続いたり、発熱などの全身症状があったりする場合には、早めに婦人科や消化器内科を受診するようにしましょう。

性行為後にお腹の右側に腹痛がある原因と対処法

性行為後にお腹の右側に痛みがある場合には、婦人科的な病気としてはPIDや子宮外妊娠、卵巣嚢胞の破裂、卵巣出血、子宮内膜症などがあります。左側と同様に、子宮内膜症性嚢胞の破裂によってもお腹の右側に痛みを生じることがあります。なお、子宮内膜症性嚢胞の左右差について調べた報告はいくつかありますが、はっきりとした差は明らかになっていません。子宮外妊娠についても、右側に多いという報告がみられるものの、現時点では明らかな左右差はないと考えられます。
卵巣出血については右側に多いとされています。これは骨盤内の右側は左側と異なりS状結腸と呼ばれる大腸が無いことが関係しています。こうしたクッションとなるものが無いため、骨盤壁に卵巣が直接衝突し出血しやすいからとされます。
また、消化器内科的な病気としては、急性虫垂炎や胆石症の可能性もあります。
性行為後にお腹の右側の腹痛が続く場合も、早めに婦人科あるいは消化器内科を受診するようにしましょう。

性行為後に腹痛と下痢がある原因と対処法

腹痛や下痢は、特に大腸など消化器の感染症によって主に引き起こされます。性行為でもそうした感染症が引き起こされる場合があり、特に口や肛門を使った性行為ではそのリスクが高まります。
性行為に関連する原因としては、ロタウイルスや大腸菌などがあります。この場合、水のような下痢便が出やすいという特徴があります。
口や肛門を使った性行為の後に、腹痛や下痢がみられる場合には、消化器系の病気の可能性もあります。感染症内科や消化器内科を受診するようにしましょう。

性行為後に腹痛と吐き気を催す原因と対処法

性行為後に腹痛と吐き気を催す可能性がある病気としては、骨盤内炎症性疾患(PID)が挙げられます。これは、女性の生殖器系である子宮や腟、卵管などに影響を与える臓器の感染症または炎症のことです。クラミジアや淋病、マイコプラズマ・ジェニタリウムといった性感染症が一般的な原因です。
PIDの症状は、下腹部の痛みや圧痛、生理痛、排卵痛、おりものが臭くなる、あるいは発熱や吐き気・嘔吐といったものがあります。特にクラミジアや淋病によるPIDは、不妊の原因にもなります。
こうした症状がある場合には、婦人科や消化器内科を受診するようにしましょう。

性行為後に激しい腹痛がある原因と対処法

性行為後に腹部に激痛がある場合には、子宮外妊娠の破裂[一阿1] や、卵巣嚢胞の破裂、卵巣腫瘍の茎捻転(けいねんてん)、子宮内膜症性嚢胞の破裂、卵巣出血といった原因が考えられます。子宮外妊娠では体内での大量出血により、最悪の場合死に至る場合もあります。脱力感やめまい、失神がおこる場合は特に緊急性が高いです。あるいは、消化器の病気として、腹膜炎というお腹の重篤な炎症の可能性もあります。
激しい腹痛がみられる場合には、早急に医療機関を受診するようにしましょう。

すぐに病院へ行くべき「性行為後の腹痛」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

性行為後に激しい痛みが突然生じた場合は、婦人科あるいは消化器内科へ

突然の激しい腹痛や持続的な強い痛みがある場合、すぐに救急外来を受診するようにしましょう。
これらの症状は子宮外妊娠の卵管破裂、卵巣腫瘍の茎捻転、卵巣出血、卵巣嚢胞破裂、急性虫垂炎、腹膜炎など重篤な病気の可能性があり、迅速な診断と治療が必要です。

受診・予防の目安となる「性行為後の腹痛」のセルフチェック法

・激しい痛みや耐えられない痛みがある場合

・発熱や異常な腟分泌物がある場合

・持続的な痛みがある場合

配信元: Medical DOC

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