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「消費するよりも、滋養していくことを選びたい」スタイリスト風間ゆみえ連載

「消費するよりも、滋養していくことを選びたい」スタイリスト風間ゆみえ連載

In The Mood for Beyond the Clock


 


2026


新しい年を迎えて「さて、今年はどうしよう」と考える時間は、人それぞれだと思います。

目標を立てる人もいれば、昨年の延長線で静かに歩き出す人もいる。




オトナミューズ世代のなかには、今年は、頑張ることを増やすよりも、減らすことを考えている人も少なくないのではないでしょうか。

消費するよりも、滋養していくことを選びたい―




そんな年の始まりなのかもしれません。

スタイリスト・植物療法士 風間ゆみえさん
スタイリスト、ファッションディレクター、フランス植物療法普及医学協会認定のメディカルフィトテラピスト、ルボア フィトテラピースクール講師と多数の肩書が。本誌の連載も好評。

When time is no longer measured,life begins to feel wider.

時間を測ることをやめたとき

人生はもっと広く感じられる

私はというと、東洋医学と共に学んできた算命学をひとつの手がかりに、未来を大きく描くというよりも、今の自分にとって無理のないエネルギーバランスを確かめるような年の迎え方をしています。からだの感覚も、インスピレーションも、すでに進む方向を知っているようで、今年は不思議と気持ちが穏やかです。




振り返ってみると、10代、20代、30代と、少し大げさに思われるかもしれませんが、人の何倍もの速度で生きてきました。やりたいことが尽きない、という点は今も変わりません。ただ、若いころのそれとは、質が違っています。当時は、目の前に溢れるものをひたすらこなしていく毎日で、立ち止まることも、選び直すことも、振り返る余裕もなく、記憶が抜け落ちてしまうほど、ただ、ただ前へと走り続けていました。40代、50代を迎えたころから、ようやく立ち止まることを覚えました。速さよりも、佇まい。量よりも、エネルギーの質。女性が、無理なく、美しく見える暮らし方をしたいと思うようになったのです。




そして2026年。今年はさらに、少し不思議な感覚があります。自分に飽きてきた、というと言葉は強いのですが、これまでの自分の延長だけでは、どこか物足りない。新しい自分に出会いたい、というよりも、まだ足を踏み入れていない「自分の領域」を、そろそろ歩いてみたい。もちろん、新しく生まれるものも、全て自分の中から出てくるものなのですが、形や質、佇まいが、これまでとは少し違う。そんな予感のする一年です。だから今年は、「何を成すか」よりも、「どう生きるか」。よく言われる「丁寧に暮らす」という言葉にも、少し自分なりの意味を持たせたいと思っています。

A new year begins―and I hope this series brings joy and inspiration to you.

世界が大きく形を変え続けている、過渡の時代、拡大していくように見えるデジタルの“小さな”世界に自分を閉じ込めるのではなく、今は、どこにも属しきらない、境界の時代。いわゆるリミナルエイジの只中にいるからこそ、自分がどこにいるのか―それは、心の置きどころの話でもあるのだと思います。世界は加速しているのに、どこか時間が止まろうとしている。そんな不思議な時代にも感じます。正しさや意味が、あちこちで溶け始めている時代。それでも私たちは、画面の外にある時間へ戻ることで、自分の感覚を思い出していく。


 


時間に追われる感覚から、少し距離をとる。私たちはつい「時」を測り過ぎてしまうけれど、宇宙という大きな空間の中にいる自分を思い出すと、時間はもっと伸びやかで、曖昧で、自由なものだったはず。瞬間瞬間を、少し神秘的に感じ取れる感覚を、もう一度取り戻したい。デジタルがここまで進化したからこそ、そんなことを考えるようになったのかもしれません。どこまでも広がっていくように見えるデジタル社会は、時にとても小さく、点の集合のようにも感じられるのです。


 


私の一日の始まりは、相変わらず寝坊気味です。けれど、たまに早起きができた朝、窓から差し込む朝陽の光に、胸が少しときめく。17年ほど愛用しているバスローブは、まだ十分使えるけれど、気分を変えたくて、新しい色、ときめく鮮やかなピンクのバスローブを新調しました。白湯を沸かし、お香を焚き、花の水を替える。いわゆる「ルーティン」と言われそうな朝のリチュアルが、毎日新鮮に感じられるのは、自分の感覚に、きちんと意識を向けていられるからだと思います。鉄瓶に水を流し込む音。焚いた香の煙が描く、ゆるやかな動き。そして、静かに移ろっていく花の表情。どれひとつとして、昨日と同じものはありません。だからこそ、飽きることなく、この時間が、いつの間にか一日の軸になっていました。見たいものを見て、触れたいものに触れる。自分の感覚に正直でいると、時間は急に尊くなり、幸福度がぐっと上がる。特別な出来事がなくても、朝の過ごし方ひとつで、一日は全く違う表情を見せてくれます。


 


2026年は、「どうなる」「こうする」と未来を決め過ぎず、学び続けることそのものを楽しむ一年にしたい。朝起きて、静かに過ごす時間が「いい時間だ」と思えること。それが、今の私にとって、一番大きな豊かさなのかもしれません。


 


今日も、景色がひらく一日を。

photograph : Mari Sarai[CEKAI]

otona MUSE 2026年3月号より

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「37歳、輝く季節が始まる!」がキャッチコピー。宝島社が発行する毎月28日発売のファッション誌『otona MUSE』がお届けする、大人のためのファッション・ビューティ・ライフスタイル情報!