親が年を重ねるにつれ、「介護はいつから始まるのだろう」と漠然とした不安を感じる方は少なくありません。この頃同じ話を繰り返すようになった、身だしなみが少し乱れてきたなど、些細な変化に気付くと、いよいよ自分の番かもしれないと焦りを感じる場合もあるでしょう。
この記事では、親の介護が始まる平均年齢やきっかけ、早めに準備すべき内容を解説します。また、年代別のサポート方法や見逃したくないサインもあわせて整理しています。
将来の見通しを立てて具体的な段取りを知ることで、見えない不安への安心感がある状態を目指せるよう、ぜひ参考にしてください。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院生理学講座生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。
親の介護が始まる時期の目安

統計データによると、介護認定を受ける年齢には一定の傾向がみられます。ここでは、平均的な開始時期と認定を受ける前の段階で必要になるサポートの目安を解説します。
要支援・要介護認定を受ける方の平均年齢
介護が必要になる時期は、75歳を過ぎたあたりから急激に増加します。厚生労働省の調査では、後期高齢の方になると要介護認定を受ける割合が高まることが示されているためです。
認定を受けている方の割合は以下のとおりです。
65〜74歳:約4.3%
75〜79歳:約13.0%
80〜84歳:約27.4%
85歳以上:約59.1%
参照:『令和5年度 介護保険事業状況報告』(厚生労働省)をもとに算出
80歳前半では約4人に1人が何らかの支えを必要としています。親が75歳を迎える頃を一つの節目とし、将来の生活を話し合い始めるのが望ましいでしょう。
介護未満の生活支援や見守りが必要になる年齢の目安
公的な認定に至らなくても、日常生活の不自由を感じ始める時期は認定年齢より早く訪れます。加齢で活力が低下するフレイル(虚弱/きょじゃく)の状態になると、家事や外出の付き添いが必要になりやすいためです。
70代前半から現れやすい変化は以下のとおりです。
高い場所の掃除や重い買い物が負担になる
病院の受付や会計が難しく感じ通院を嫌がる
歩行速度が落ちて信号を渡りきるのが不安になる
こうした段階でご家族が関わることは、要介護状態への進行を遅らせる助けになります。70代に入ったら、親の小さな困りごとに気付くよう心がけましょう。
介護が始まる主なきっかけや原因

介護が必要になる背景には、身体的な衰えだけでなく事故や環境の変化も深く関わっています。ここでは、多くの家庭で介護生活の始まりとなっている主なきっかけを4つ解説します。
転倒や骨折
高齢の方にとって、転倒による骨折は寝たきりにつながる重大なきっかけです。加齢により骨密度が低下している場合、家の中のわずかな段差でも大きな怪我(けが)を負いやすいためです。
大腿骨(だいたいこつ)の骨折
脊柱(せきちゅう)の圧迫骨折
例えば、トイレへの移動中に滑ったり、絨毯の端に足を取られたりして転ぶ事例が多くみられます。骨折による長期入院で筋力が低下し、退院後に自立歩行が困難になるケースも少なくありません。住環境を整えるなど、転倒を防ぐ対策を講じることが大切です。
急性疾患
脳血管疾患(脳梗塞など)や心筋梗塞は、ある日突然、介護を余儀なくされる一因です。これらは一命を取り留めても、麻痺(まひ)などの後遺症が残る場合が少なくないからです。
脳梗塞や脳出血
心筋梗塞
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
前日まで元気だった親が、倒れた日から車椅子生活になる状況に戸惑うご家族もよくみられます。持病の管理や定期健診を促し、早期発見に努めることが安心感がある生活につながります。
認知症の発症や認知機能の低下
認知機能の低下は、身体は元気であっても見守りや介助を必要とするきっかけです。判断力の低下により、薬の服用や金銭管理が困難になるためです。
同じことを何度も聞き返す
料理の段取りが悪くなる
季節に合わない服装を選ぶ
ガスの消し忘れなどの症状が現れると、ご家族は常に神経をすり減らすことになります。親の行動にささいな違和感に気付く段階で専門医を受診することが、ご本人とご家族を支える一助です。まずはかかりつけの医師に相談してみましょう。必要に応じて、脳神経内科や、もの忘れ外来などの適切な専門医を紹介してもらう流れがスムーズです。
配偶者の入院、死別など同居者の不在
同居する配偶者の不在は、介護が本格化する大きな転機です。これまで夫婦で支え合っていたバランスが崩れ、一人では生活が成り立たなくなることが少なくないためです。
配偶者の長期入院
パートナーの急逝
同居家族の転勤や転居
配偶者が身の回りの世話をこなしていたため、周囲からは不自由なく見えていたケースでも、一人になった途端に生活が困難になる場面がみられます。万一の際に地域の相談窓口を頼れるよう、事前に情報を把握しておきましょう。

