
「そりゃママが作ったのより、うまいわな」
外食先で放たれた旦那さんの不用意な一言。それをきっかけに、とある夫婦の間に激しい火花が散った。気まずい沈黙のまま数週間。険悪な空気に心を痛めた息子は、ある場所へと足を運ぶ。そこは、メニューが「おでんとコーヒー」だけという、少し変わったお店だった。
まるいがんも(@kenihare)さんが描く『さかえ通り O.D.N』。中でも、家族の絆を具材になぞらえた「よくケンカする夫婦に隠し包丁を入れた子供の話」は、X(旧Twitter)で8500を超えるいいねを獲得し、多くの読者の涙を誘った。
■お酒の代わりにコーヒー。飲めない作者が生んだ「変なお店」の設定妙



舞台は、作者がかつて住んでいた高田馬場に実在する「さかえ通り商店街」。物語の軸となる「おでんとコーヒー」という不思議な組み合わせは、作者自身がお酒を飲めないという実情から生まれたものだ。
「居酒屋の知識がないので、お酒を詳しく書けない。なら、自分が好きでよく作るおでんと、コーヒーのお店にしようと。ペンネーム(がんも)の由来でもあるほど、おでんが大好きなんです」
オムニバス形式で展開する本作は、毎回おでんの具材の特徴をストーリーの核に据えている。味が染み込みやすくするために施す「隠し包丁」を、家族のわだかまりを解くための「小さな気遣い」に重ね合わせる演出は、まさに本作の真骨頂と言える。
■「具材と物語のリンク」に苦心。キャラへの愛が深まった連載の日々
毎回、おでんの具材に絡めてストーリーを作るのは、回を重ねるごとに「産みの苦しみ」があったという。「具材の特徴になぞらえないとおでん屋である意味が薄れてしまう。後半はかなり苦労しましたが、そこは譲れないこだわりでした」
連載が進むにつれ、ミステリアスな店主(マスター)や訪れる客たちへの愛着は深まっていった。メディアの終了に伴い連載は幕を閉じたが、まるいさんは「マスターの過去や登場人物のスピンオフなど、描きたい話はまだまだある。いつか続きを描きたい」と意欲を見せる。
■ナイーブなテーマへの挑戦。読者の声から得た「次への糧」
大きな反響を呼んだ「隠し包丁」の回。感動の声の一方で、親のケンカというデリケートな問題に対し、厳しい意見も届いたという。まるいさんはそれらのコメントを真摯に受け止め、「マンガ作りを活かしていく」と前を向く。
取材協力:まるいがんも(@kenihare)
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