体力も気力も大きく変わる「80歳の壁」。そんな壁を軽やかに超え、現役で活躍し続ける人たちがいます。高齢者医療のカリスマ・和田秀樹が“80歳超えのレジェンド”たちと対談した内容を収録した『80歳の壁を超えた人たち』は、老いへの不安を希望に変える一冊です。
食事、運動、医療との距離感、意欲の保ち方まで、“老けない人”から幸せに長生きする秘訣を引き出した本書から、一部をご紹介します。
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藤本茂(ふじもと・しげる)
1936年兵庫県生まれ、89歳(2026年1月時点)。19歳から投資を始め、現在もデイトレーダーとして活躍。投資歴70年目に突入して、築き上げた資産は24億円に上る。勝つための投資哲学を公開した初の著書『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)は12万部のベストセラーとなった。
撮影:鞍留清隆
やりたいと思ったら動く。今日が一番元気なんだから
和田 藤本さんは、どれくらいの取引をされているのですか。1ヵ月に6億円くらいの取引があるという話は聞いたのですが、回数で言うと?
藤本 最近は500~600回くらいかな。1ヵ月で。
和田 そんなに?
藤本 そう。デイトレードは究極の〝脳トレ〟。ボケてる暇なんてありませんわ(笑)。
和田 パソコンも自在に使うんですか?
藤本 いやいや。人差し指でキーボードをゆっくり押す程度やね(笑)。株の取引だけはできる。だけどそれ以外でパソコンは使いません。
和田 パソコンを使って株をやり始めたのはいつですか?
藤本 今から22年前(2002年)だから、私は66歳でしたね。最初は証券会社の人から「うちの会社でもネット取引始めるからやってみませんか?」と連絡もらってね。パソコンもネット取引もまったくわからんかったけど、話聞いたら便利だし、手数料も安い。「これはやらん手はない」と思い、すぐにパソコンを買いに行きましたわ(笑)。
和田 決断と行動がはやい(笑)。
藤本 これしたいと思ったら、すぐに行動するのが〝藤本ちゃん流〟です(笑)。
和田 やりたいと思っても、高齢の方には何らかの理由をつけて行動を抑えてしまう人がいます。でも確実に言えるのは、「高齢になったら今日が一番元気」ということです。「健康でいられなくなるリスク」は年々高まっていきますからね。だから「やりたい」と思ったら、すぐ行動を起こしたほうがいいと思うんですよ。
藤本 年寄りは意地を張り過ぎるからね。せやけど意地を張ったところで、人生は思い通りにいかない。株もそうだけど。うまくいかないのを楽しむくらいの余裕が重要なんやないかな。
和田 健康で幸せな人生を送るには、藤本さんのような柔軟な考えが大事だと思います。毎日の結果でストレスが溜まることはないんですか?
藤本 楽しいからね。「今日買うたら明日なんぼになる」とか「今日で一旦売っといたら明日なんぼになる」と思うと、そりゃあ楽しいでしょ。しかも予想が当たると利益が出るのやから。もちろん負ける時もあるけどね(笑)。
撮影:鞍留清隆
全部勝てるわけがない。欲をかくとうまくいかない
和田 負ける時も含めて面白みなんですね。
藤本 そりゃあ全部勝てたら一番やろ(笑)。せやけど全部勝つことはない。神様じゃないからね。100回やって80回か82回くらい勝てば大成功。100回やって100回勝つことは神様でもできない。
和田 80回でも相当、高い勝率ですけどね(笑)。
藤本 株の言葉で「頭と尻尾はくれてやれ」と言うんやけど。投資家は皆「底値で買って天井値で売りたい」と思ってる。けど「ここが最高値や」と思った時はまだ伸び、「最安値や」と思うた時にもまだ下がったりする。天井や底を狙おうと欲かくと、まずい結果になるんやね。魚だって頭と尻尾は食えんやろ。
和田 これまた名言ですね(笑)。
藤本 私はとことん真ん中ですわ。1000円動いても頭と尻尾は200~300円で真ん中の700円を取れれば十分に成功と思うとる。欲をかくとなかなか売れへんし、買われへん。結果、うまくいかん。
和田 そう思えるのも経験の差でしょうかね?
藤本 70年も投資やってるから気持ちに余裕があるやろうね(笑)。株価を動かすのは材料じゃないねん。株で本当に重要なのは、材料を受けて人々がどう反応するか。その心理を読んで反応する。「人が食いついて値が高くなる」と思ったら、人より早く買わなあかん。
撮影:鞍留清隆

