●システム管理者は、会社の求めに応じる義務がある?
Kさんが悩んでいるのは、「会社から求められたら、システム管理者は理由を問わずDMのデータを会社に提出しなければならないのか?」という点です。
この問題は、
1)そもそもこのエクスポート自体が適法に行える性質のものなのか、
2)仮に違法であるとして、会社から違法な業務命令が下された場合に、システム管理者のKさんがそれに従わないことができるか、
という2つの問題に分解して考えられます。
●1)エクスポートは適法に行えるか?
裁判例からすると、エクスポートが適法に行えるかどうかは、以下の1から4のような要素を総合的に考慮して判断されるでしょう。
1. エクスポート権限のある者からの依頼があるか
たとえば、システム管理者に依頼した会社の人間が、職務上従業員のSlackのDMにつき、目的に沿った調査をする権限や責任がある立場の者であることが必要でしょう。
2.DMをエクスポートする職務上の合理的必要性があるか
労働法上、社会通念上相当な範囲では私用メールも許されると考えられています。そこで、対象となる従業員がDMを濫用しているなどの事情が具体的に疑われるような場合でないと、エクスポートの合理的必要性は認められないと考えられます。
特定の従業員に圧力をかける目的や、個人的な好奇心を満たす目的などでのエクスポートの場合には、合理的な必要性は認められないでしょう。
3. 適正な手続きに基づき、適正な手法でエクスポートしているか。エクスポートが恣意的でないか
たとえば、エクスポートを求める者から管理権者への申請や、Slackの運営会社に提出する資料に虚偽の説明がされており、それに基づきエクスポートがなされる場合などは、適正な手続に基づくものとはいえない可能性が高いでしょう。
4. エクスポートされる側に生じた不利益の程度が大きすぎないか
不利益とは、具体的にはDMを見られることにより従業員に生じるプライバシー侵害の大きさなどです。

