見守りカメラが捉えた犯人
それから数日。
恵は、見守りカメラの存在を意識しながら、何事もない顔で生活を続けた。
健太も、表面上は変わらない。
そして、ある日の午後。
莉子を連れて買い物から帰宅し、ふとした気持ちで恵は録画履歴を確認した。
再生ボタンを押す指が、微かに震える。
画面が切り替わり、無音の映像が流れ始める。
リビング。誰もいないはずの時間帯。
数秒後、映像の端に、人影が映った。
健太だった。
恵は息を止める。
健太は周囲を一度見回し、引き出しに近づいた。
迷いのない動き。引き出しを開け、封筒を取り出す。
中を覗き込み、紙幣を数え、数枚を抜き取る。
そして、何事もなかったかのように封筒を戻す。
画面の中の健太は、慣れた手つきだった。
恵の視界が、一瞬滲む。
(……やっぱり)
震える指で、再生を止める。
否定したかった。勘違いであってほしかった。
でも、もう逃げ場はなかった。
封筒貯金を抜き取っていた犯人。
それは、他の誰でもない。
──夫、健太だった。
恵は、深く息を吐いた。
驚きよりも、怒りよりも、先に湧いたのは虚しさだった。
(この人は……)
疑っていたことが、現実になった瞬間。
夫婦として築いてきた信頼が、音を立てずに崩れ落ちた。
画面に映る健太の姿を、もう一度だけ見つめる。
そこに映っていたのは、
家族を守る夫でも、優しい父親でもなかった。
ただ、嘘をつき、家族のお金に手を伸ばす男だった。
真実は、はっきりしてしまった。
あとは、どう向き合うか。その重さが、恵の肩にのしかかっていた。
あとがき:真実は、知りたい形では現れない
恵が見たかったのは犯人ではなく、「安心」でした。けれど映っていたのは、家族を裏切る夫の姿。
怒りより先に虚しさが湧く描写は、信頼が壊れる瞬間の静けさを際立たせています。
ここから物語は、犯人探しではなく「どう向き合うか」へ進んでいきます。
証拠を突きつけた先にあるのは、夫婦としての対話と、それぞれの決断です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
イラスト:まい子はん
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

