女性の名画⑦ 『民衆を導く自由の女神』(ウジェーヌ・ドラクロワ)
ウジェーヌ・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』, Public domain, via Wikimedia Commons.
19世紀のフランスで流行したロマン主義。その代表的作家として知られているウジェーヌ・ドラクロワ(1798-1863)は、32歳の時、1830年に起きた「7月革命」をこの絵の中に描きました。
1789年、王や厳しい身分制度によって抑圧されていたフランス国民が蜂起し、フランス革命が起こりました。しかし、その約40年後には再び王政が復活し、シャルル10世による統治が始まってしまったのです。
これに憤慨した国民たちはふたたび革命を起こし、「七月革命」は最終的に民衆側の勝利によって終結しました。
そんな7月革命において、ドラクロワがヒロインとして選んだのは、マリアンヌ。彼女は特定の女性というわけではなく、フランスを象徴する寓意的な存在です。
マリアンヌが被っている赤い三角帽子は、かつてギリシャやローマで解放された奴隷たちが被っていたとされています。この帽子は、革命家たちの間で自由の象徴とされていました。
力強く民衆を鼓舞するマリアンヌの声が聞こえてきそうな名作です。

民衆を導く自由の女神(ドラクロワ)を徹底解説!なぜ胸がはだけているのか、どこで見られるのか、寓意・手法などを紹介
『民衆を導く自由の女神』は、フランスの画家、ウジェーヌ・ドラクロワが1830年に描いた名画です。フランス7月革命を象徴する重要な作品として、政治的・芸術的に大きな意味を持っています。 また西洋美術史…
女性の名画⑧『フォリー・ベルジェールのバー』(エドゥアール・マネ)
エドゥアール・マネ『フォリー・ベルジェールのバー』, Public domain, via Wikimedia Commons.
『フォリー・ベルジェールのバー』は、エドゥアール・マネ(1832-1883)が死の1年前に描いた作品です。肖像画のように見えますが、実は主題が明かされておらず、当時の鑑賞者たちに多くの衝撃を与えました。
この作品の舞台となった「フォリー・ベルジェール」は、当時のパリで最も人気の高い音楽ホールでした。マネは友人らとここをよく訪れ、現地でスケッチを描いていたといいます。
絵の中心に立っているのは、ホール内のバーで働く女性。感情の読み取れない、謎めいた表情を浮かべています。
フォリー・ベルジェールでは、さまざまな興行が行われました。最初は歌劇やパントマイムといった王道のパフォーマンスから、次第にサーカス、カンガルーのボクシングなどの過激なショーが開催されるようになったといいます。
それらの催しに熱狂する人々を背景に、どこか冷めたような眼差しで立っている女性の姿に、思わずドキッとさせられる作品です。
女性の名画⑨『見返り美人図』(菱川師宣)
菱川師宣『見返り美人図』, Public domain, via Wikimedia Commons.
“浮世絵の始祖”と呼ばれる菱川師宣(ひしかわもろのぶ。生年不詳~1694)。彼の最も有名な作品が、この『見返り美人図』です。
この作品が生まれた江戸時代、町人を中心とした文化が栄えはじめ、人々は自由で開放的な日々を享受していました。
師宣は、現在の千葉県鋸南町にて、染織品に刺繍や装飾を施す縫箔師(ぬいはくし)の家に生まれました。元々絵を描くのが好きだったことから、「やまと絵」をはじめとしたさまざまな画法を学び、独自のスタイルを築き上げたとされています。
誰かに呼び止められたのか、あるいは何かに目を奪われたのか。絵の中の女性がふと振り返ったその一瞬が、見事に切り取られています。
特に注目したいのが、女性のファッションです。
鮮やかな紅色の着物に、下げた髪の先を輪に結んだ「玉結び」というヘアスタイル。そして高級品のべっ甲の櫛(くし)。これらは当時、女性たちの間でトレンドだったファッションです。
師宣の描く美人像は当時の人々の心を強く掴み、「師宣の描く美女こそ江戸女」と俳句に詠まれるほどでした。
女性の名画⑩ 『タヒチの女』(ポール・ゴーギャン)
ポール・ゴーギャン『タヒチの女』, Public domain, via Wikimedia Commons.
ポール・ゴーギャン(1848-1903)は、株式仲買人や絵画取引といった仕事から画家に転身し、やがて「原始的な楽園」だと想像したタヒチで一生を終えた画家です。
そんなゴーギャンは、タヒチの風物や神話などを題材にした作品を残しています。その中でも特に多く描かれていたのが、現地の女性たちでした。
ゴーギャンの作品の特徴として、平面的な色彩と明確な輪郭線が挙げられます。西洋美術は遠近法や色のグラデーションが原則でしたが、ゴーギャンは浮世絵をはじめとして日本美術に強い影響を受け、独自の作風を確立しました。
『タヒチの女』に描かれているふたりの女性は、赤やピンクといった目にも鮮やかな服を着て、ゆったりと座っています。
褐色の肌、温暖な気候、のどかな情景を感じさせるこの作品。女性たちの表情はリラックスしているようにも、物憂げにも見えます。全体的に現地の生活の力強さと、女性の神秘さが描かれた一枚と言えるでしょう。
まとめ
本記事で紹介した絵画たちは、描かれた時代も、国も、そして画題も異なるものたちです。
しかし、それぞれの作品に描かれた女性たちは、唯一無二の美しさと凛々しい佇まいによって、魅力的な輝きを放っています。
モナ・リザの神秘的な微笑み、フリーダ・カーロの不屈の精神。ミュシャやクリムトの作品に描かれた優美な女性たち。
絵画の中で、働き、人々を鼓舞し、日常を生きる女性たちの姿は、現代の私たちにも自分らしい輝きのヒントを与えてくれるはずです。
国際女性デーを機に、世界の名画を通じて「自分らしい輝き」を探してみませんか?
参考書籍:
『天才芸術家ものがたり レオナルド・ダ・ヴィンチ』サラ・バルテール 文/オレリー・グラン 絵/古川萌 監修/松枝恒典 訳(中央公論新社)
『天才芸術家ものがたり フェルメール』ヴァンサン・エティエンヌ 文/クレール・ペレ 絵/古川萌 監修/松枝恒典 訳(中央公論新社)
